DO-MANNAKA de Alternative

走るポップ・リスナー、その魂のゆくゑ

2015 マイ・ベストアルバムTOP10

年が終わるスレスレに、滑り込みで投稿します。

今年も「自分に力を与えてくれたアルバム」が選考基準です。とはいえ、今年は音楽文化全体に力をもらった気もします。やはり”大きなもの”に支えてもらえるのは心強いです。

では行きます。

10. Grimes - Art Angels

アート・エンジェルズ

アート・エンジェルズ

カナダ出身の女性ソロアーティストの4作目。US36位、UK31位、JP114位。
ジャケットこんなのですが、自分自身のポップミュージックとは何か?という問いに正面から向き合う、割と真面目な作品だと感じました。強烈な個性と巨大な大衆性とのせめぎ合いの中で、批評や議論に耐えうる強さを持つ作品を仕上げたのは本当に立派なことだと思います。

9. Foals - What Went Down

What Went Down

What Went Down

UKのインディー・ロックバンドの4作目。UK3位、US58位、JP134位。
世界的にロックバンドが小粒化していっている中、前作『Holy Fire』に続きスタジアムスケールの作品をしっかり世に送り出してくれました。
Foalsの場合、単にスケールがデカいだけでなく、出自であるマスロック・ポストロックの構成美をきちんと魅せてくれるのも聴くうえで嬉しいポイント。特に2曲目「Mountain at My Gates」の大サビ前のギターリフは完全なる構成美の勝利。今年最高のギターリフでした。

8. 星野源 - Yellow Dancer

YELLOW DANCER (通常盤)

YELLOW DANCER (通常盤)

日本のマルチタレントのソロ4作目。JP1位。
元々マイケル・ジャクソンやプリンスのファンである源さんが「原初的なダンスミュージック」にフォーカスした結果、丁度今年トレンドとなったSoul/R&Bのテイストを大きく汲むことに。世界的な潮流と個人的な趣味が奇跡的にマッチして、とんでもない大衆性を生んだ一枚。それを支えたバックミュージシャンの力量にも拍手。「SUN」はやはり大名曲。

7. Adele - 25

25 (+ 3 Bonus Tracks)

25 (+ 3 Bonus Tracks)

UKの女性シンガーの3作目。US1位、UK1位、JP7位。全世界の売上枚数は、前作『21』に続き1,000万枚を突破したとか。
今作も悲痛な恋愛ドラマが感動を呼ぶという構図は変わらないものの、自身が結婚・出産を経た今は、それを自発的なものではなく”演じよう”としているように感じました。ブルーノ・マーズからトバイアス・ジェッソ・Jr.まで、幅広いクリエイターから楽曲提供を受けても全て”アデル印”に変えてしまう強さがあるし、それが8ケタもの枚数を売ってしまう要因かな?と思っています。

6. Ogre You Asshole - Workshop

workshop

workshop

日本のオルタナティヴ・ロックバンドの企画盤。JP61位。
名目上は”ライブ・アルバム”なのでここに入れるべきではないのかもしれませんが、あまりにもクリエイティブだったのと、ライブ・アルバムの概念を大きく変えるくらいの衝撃作だったので、あえて入れさせていただきます。
ライブ・アルバムにも関わらずオーディエンスの拍手や声はほとんど入っておらず、OYAのスタジオ盤とは異なるライブの音を徹底的に魅せる一枚。中村宗一郎さんによるサウンドエフェクトも効果的で、ラストの「ロープ long ver.」は視界が真っ白になるくらいの衝撃を受けました。”ライブの雰囲気をそのまま収録!”というライブ・アルバムは数あれど、ライブの音から新しいアートを作ってしまう…もはやこれは、フランク・ザッパの領域まで行ってしまったのかもしれません。

5. Alabama Shakes - Sound & Color

サウンド&カラー

サウンド&カラー

USのソウル/ブルースバンドの2作目。US1位、UK6位、JP72位。
まだ決して上手くはないし、何一つ新しい部分はないのに、音の深みとブリタニー・ハワードのソウルフルボイスで独自の領域を切り拓いた、ある意味”全く野心的でない野心作”。アラバマに根付いた文化への理解と人間の情念でここまでやれるのか!と、衝撃を受けました。4曲目の「Gimme All Your Love」は、今年のベストトラックです。

4. Florence + The Machine - How Big, How Blue, How Beautiful

How Big, How Blue, How Beautiful (Deluxe Edition)

How Big, How Blue, How Beautiful (Deluxe Edition)

UKの女性シンガーによるポップユニットの3作目。US1位、UK1位、JP圏外。
ここまで雄大かつ雄弁なポップアルバムは過去聴いたことがない!というくらい、素晴らしい傑作。Adele同様、女性としての暗部を武器に変えていくスタイルですが、音と歌の重みは圧倒的にこちらのほうが上。表題曲「How Big, How Blue, How Beautiful」に象徴されるように、女性ひとりの強さが音楽の力で広大な自然にも負けないくらいのスケールを持っていく様は感動しかないし、これが多くの人の胸を打ったから”US・UKダブル1位”という結果が生まれたのでしょう。

3. Kendrick Lamar - To Pimp A Butterfly

To Pimp a Butterfly

To Pimp a Butterfly

USラッパーの2作目。US1位、UK1位、JP37位。
オバマ大統領のお墨付きも頂いてグラミー賞まっしぐら、まさに2015年を象徴する作品。
黒人社会とは遠いところに居る私たちにとっては若干”違う国のお話”という感じもしなくもない(だから1位にしませんでした)。ただ、ここで語られる差別や偏見、格差といった問題は、質は違えどここ日本にも存在し続けている。それは当然忘れてはならないし、文化の中でリプリゼントしていく重要性も理解し続けていかなくてはならない。そういうことを教えてくれる、貴重な一作でした。あと、シンプルに”ブラックミュージックの新たな礎”としても語り継がれていくであろう質の高い音であったことも付記しておきます。音楽としては、やはりここは重要。

2. cero - Obscure Ride

Obscure Ride 【通常盤】

Obscure Ride 【通常盤】

東京のポップミュージックグループの3作目。JP8位。
ケンドリック以上に”ブラックミュージック”をここ東京で浸透させてくれた一枚。これがなかったら、おそらく星野源もああいうアルバムを作らなかったしヒットもしなかったはず。多くの人が既に書いてますが、小沢健二フィッシュマンズに並んで”東京の音楽”を象徴していく1枚に今後なっていくでしょう。
まんまディアンジェロだったり、まんまトライブ・コールド・クエストだったりする辺りの”人力サンプリング”のセンスはまだ発展途上のように思いますが、果敢な挑戦は今後も続けていってほしい。その結果で生み出された作品がオリコンTOP10圏内に入ったというのも、まだまだ日本の音楽シーンも捨てたもんじゃないな、と思えて嬉しかったです。

1. Tame Impala - Currents

Currents

Currents

オーストラリア出身のサイケデリック・ロックバンドの3作目。US4位、UK3位、JP71位。
なんの比較もなしに「最高だー!!」と言える作品は間違いなくこれなので、1位にしました。靄のかかったシンセとボーカルを聴いているうち、己の姿がだんだんと自分から離れていって、空虚の中で音に呑み込まれていく・・・しかし、ドラムスと、もう一台のメロディを奏でるシンセは確実に意識を前に、前に進めていく。言ってみれば、超克のサイケデリック体験。これは単純にすごかったし、個人的にも大きな原動力になりました。
あと、こういう作品が世界的に売れるというのも驚き。ピンク・フロイドが売れていた時代の感覚って、こういう感じなのかなあ。ますます興味深いです。
そんなふうに興味に沿って、来年も音楽文化に接していけたら愉しくなるだろうな、と思っています。皆さんにも、また色々と教えて頂くことになると思いますのでよろしくお願いします。