DO-MANNAKA de Alternative

走るポップ・リスナー、その魂のゆくゑ

Adele「21」

21

21


日本ではいまTPP参加・不参加の議論が沸き上がっていますね。私はだいたい8割方TPP推進派で、あとは国際協定と国内法のすり合わせのプロセスを明確にして参加国同士不利益の発生を小さく留められるようにすればいいんでない?と思うのですが、意外と「TPPは日本にとって不利益ばかり→じゃあ反対!」という意見も多いですね。お気持ちはよくわかるのですが、自国の利益・不利益ばかりに着目しているのは変と言うか、不思議というか。あくまでも今回は国際協定ですから、各国利益・不利益ありますよ、そりゃあ。だから、理不尽な不利益を被らないように参加国内で意思決定のプロセスを調整して、地域全体、ひいては世界全体で前を向いて進んでいければいい。あくまで国際的視座でTPPのような国際協定を眺めてみると、そう考えるのがとても自然に思えるのです。


で、今回のエントリの主題、アデルです。突然話がぶっ飛っとんでいるように思えるかもしれませんが、アデルです。


2011年の年間CD売上レースにおいて、レディー・ガガらを差し置いてぶっちぎりのトップを爆走しているアデルの2ndアルバム『21』。先週の全米チャートでもまた1位に返り咲き(何度目だかもはやよくわかんない)、総売上は1,000万だか1,200万枚だかに達しているそうです。AKBの約10倍!(←そこと比較してしまうのか?笑)


そんなアデルさんの『21』ですが、私はつい先日まで食わず嫌いならぬ「聴かず嫌い」を起こしておりました。はっきりした理由はないのですが、しいて言えば、決して優れているとは言えないルックスで「あのヤローふざけんじゃねー」みたいな歌を唄っている姿を思い浮かべると、なんとなく私の嫌いなJ-ROCKに共通しているような気がして、「ああ、UKもUSもここまで墜ちたのか、残念だな。。。」と思い込んでいたのです。


しかし、先日たまたま仕事と研修でやつれた状態でフラフラとタワレコに寄った際(私は疲れるといつの間にかレコ屋に行ってしまうダメな性質があります)、フロアの中途半端な位置でぽつんと展開されているのを見て「あんたも若いのに大変ねえ、アタシと一緒だあ」とふと同情してしまい、気がつくとレジに『21』を持って行っていたのでした。で、帰宅して「先にストーン・ローゼズでも聴こうかなあ」などと思いつつも、せっかく買ってきたんだし勿体無いから聴いてあげよう(←なんという上から目線!)と思ってCDをセット、そして一聴。


…あらまあ、良いではないですか。


歌詞はやっぱり「あのヤローふざけんじゃねー」でしたが、その歌詞が乗っかってくる歌の力(NHKの言うようなヤツではない)が凄い。ジャニス・ジョプリンを想起させる年齢不相応なしわがれ声にも関わらず、伸びるところはよく伸びる。1曲目の「Rolling In The Deep」のサビから、もうガツンと来てます。聴かず嫌いのころのイメージがJ-ROCKだったせいで、もっとバ◯プオブチキンみたいなナヨナヨした声だと思い込んでおりましたが、とんでもない勘違いでございました。ごめんなさいアデル様。


また、バックの演奏が上手く引けていて、歌の力強さをより引き立たせているようにも感じました。なんでこんなにプロダクション上手いんだろうと不思議に思い、ふとクレジットを見たら、ああ納得。


プロデューサーが、リック・ルービンでした。


リック・ルービンといえば、私の青春であるレッチリをはじめとして、ジャンルに関わらず様々なヒット・アルバムを手がけてきた敏腕プロデューサーであり、一方で「スタジオに来るといきなりソファにゴロンと横になって寝てしまう」「作業時間中も基本的に携帯いじって遊んでる」など、スーパーフリー度満点なエピソードをいくつも残している人物でもあります。


リックのプロデュースの基本姿勢は前述のとおりリラックスした雰囲気を作り、楽曲にプラスになることがあれば(ソファからムクッと起きて)アーティストやスタッフに一言二言助言する(そしてまた寝る)、という感じだそうです。このやり方がアデルのような若くて才能のあるアーティストにぴったりハマったのでしょう。歌の伸びやかさ、そして演奏の引き具合には、確かにリックの仕事の跡を感じます。何もやってないようできっちり仕事してるオッサンなんだよなー、リック・ルービン。


そんなリック×アデルの仕事が最高に上手くいったと思えるのが、ラストトラックの「Someone Like You」。シングルカットされ、現在アルバムと併せてチャートの上位に居座り続けているこの曲のメロディがあまりに美しすぎる。心にスッと入ってくる歌というのは数多くありますが、ここまで白線流しのようにスルスルと入り込んでくるメロディはそうそうない(変な例えですみません)。歌の構造はディーバによくある感じなのですが、それでも一種の発明のように思える。1曲目からガツンと来て、最後にこんな名曲が待っているアルバム、売れるに決まっとる。



…なのに、このアデルの『21』、日本のチャートでの最高位は53位だそうです。えー。おかしいべ、そりゃー。


まあ海外と日本ではCDの売られ方に差があるし、海外では売れてるけど日本では売れてないCDなんて山ほどあるけれど、アデルに関しては「みんな、知ろうとしなさすぎなんじゃね?」という気がします。海外カルチャーに対する興味・感心のなさ。日本という狭いハコの中だけで満足してしまう欲の小ささ。そういうものを感じます。


まあここまでの文章はちょっとしたアジテーションの意味も込めて書いているのでちょっとオーバーなところもあるし、日本人みんながみんな「小さくなっている」わけではないとは思っています。でも、最近の周囲の話を聴いていると「なんかスケール狭いし、みんな自分たちのことばっかで周囲のこと想えてなくない?」と思うことが多いのです。で、その代表格が・・・ここで、冒頭に戻る。

(ホント我ながら変な文章になっちゃったなあ、反省。)