DO-MANNAKA de Alternative

走るポップ・リスナー、その魂のゆくゑ

あらかじめ決められた恋人たちへ ワンマンライヴ「CALLING」

3/20(日)
あらかじめ決められた恋人たちへ ワンマンライヴ「CALLING」
@新代田FEVER


 Twitterで「自粛と萎縮は違う」と書かれた方がいらっしゃいましたが、大地震が起きてから1週間が経過した東京の街はなんとなく「自粛」をしているようで、実はじわじわと「萎縮」の渦が広がってきている、そんなふうに感じます。そして、確かな情報も共有できずに訳もわからずビビっている現状が、買い占めなどの「静かなパニック現象」を引き起こしているのでしょう。


 もちろん、自粛すべきところはしたほうが良いに決まっています。節電はマストだと思いますし、不謹慎なことも言う必要がないなら言わないほうがいい。ただ、それが過剰になってしまうと、希望の灯をともすための燃料になるはずの元気や活力まで行き場を無くしてしまいます。ほんの少しの寛容の心も、今は必要ではないですか?と、まるで自分が正義だと言わんばかりに100%の要求を突きつけてくる人たちに問いかけたい気分です。


 今日のあら恋ワンマンも、「今だからこそ爆音で」という見出しで開催が発表された際に、「それより節電しろ」という批判コメントがちょくちょく見受けられたイベントです。数字だけで考えれば、たかだかライヴハウス1箇所であっても使用電力を下げることで輪番停電の可能性は多少減るかもしれません(そんなに変わりはしないだろう、と正直思いますが)。でも、ライヴハウスにはライヴハウスなりの役割があって、ミュージシャンにもミュージシャンなりの役割がある。それを果たさなくてはならない。そして、それを観に行く私たちにも私たちなりの役割がある・・・だなんて、マックス・ウェーバーじゃあるまいし、ちょっと大げさですね。まあ単純に、「不安ばかり抱え込んでちゃダメだ!いつものように楽しもう!それが、未来につながる!」ということでしょうか?うーん、なんだか胡散臭くなってきたような。


 まぁそれはさておいて、本日のあら恋ワンマンライヴの感想に入りたいと思うのですが、いきなり結論から。今日のあら恋、めちゃくちゃ良かったです。Twitterでは「フツーに楽しかった」などとつぶやいてしまいましたが、ごめんなさい。今振り返ると、「フツー」なんてモンじゃなかったです。めちゃくちゃ楽しくて、めちゃくちゃ良かった。


 何より素晴らしかったのは、メンバーの集中力。特別なライヴということもあって相当気合が入っていたのでしょうか、4人とも鬼気迫るというか、完璧にのめり込んでいる表情で、音を鳴らし続けている。インストのライヴは割と些細なミスやズレが気になったりすることがあるのですが、今回はそういうことも全くなかったです。FEVERのステージが圧倒的な集中力に満ちあふれている・・・圧倒された1時間強でした。


 ちなみにその1時間強の間、MCも全く無し。ほぼノンストップ。かといって人を突き放したようなライヴではなく、フィジカルに踊らせ、ときにはお客さんと一緒に叫び、そして曲が終わると小さくペコリと一礼してくれる。そんな姿勢が、さらに観衆を盛り上げさせてくれる。フロアの気持ちの昂ぶりとステージ上の気持ちの昂ぶりがクロスして、さらに高いところへ上っていく・・・やっぱりライヴハウスはミュージシャンの鳴らす音楽だけではなく、観衆との共鳴、そしてそこから生まれる相乗効果こそ大きな魅力なんだと、改めて認識しました(※ところで今日のお客さん、憂さ晴らしなのかなんだか、騒がしい人が多かったですね。まあ全然、悪くないんですけど笑)。


 そんなあら恋の4名も、アンコール(終演後に客電もBGMもついたので予定外だったのでしょうか?)では集中を解いて、お客さんとのコミュニケーション(主にドラムのkimさんがイジラれていた)をにこやかに楽しんでおられました。そして、そのまま曲が始まって・・・その際にふと思い出したことが一点。今日、メンバーから震災のことや募金のことに関して、一切触れられていない。ライヴ開催発表時にはコメントがありましたが、今日はがっつりライヴやって、がっつりお客さんからイジラれて(笑)、またがっつり1曲やって、終わり。書いてしまえばそれだけのことしかFEVERというハコの中では起こっていないのですが、そうして特別何かを伝えようとしている言葉がなくても、伝わってくるものは確実にありました。それはやはり、音楽が優れたコミュニケーションツールでもある、ということの証左でもあるのでしょう(まして、あら恋インストバンドですし)。そんな音楽というツールを今、自粛!自粛!という流れで封じ込めてしまうのは、やはり勿体無いよなあ・・・みんな思い思いに音を鳴らして、思い思いに耳を傾ければいいのに・・・と考えているところです(もちろん、現状に沿った形で)。


 ライヴ後は大きな募金箱がエントランスカウンターにドカン!と置いてあったので、被災地の状況を考えると雀の涙程度の金額ではありますが、お金を投げ込んできました。少しでも役立ってくれたら・・・と願います。


 少額しか募金できないというのもそうですが、やはり現実問題は現実問題として、私たちに重くのしかかってきていると思います。これは、仕方のないことでしょう。でも、それに潰されている場合ではないんです。言ってみれば、被災地ではない東京に住んでいる私たちの最低限の役割は、「現実問題に潰されないこと」だと思います。それだけは確実に「役割」という言葉を用いて言い切っちゃっていいのかな、と考えています。日々は続いていきます。続けるのは私たちです。続けていきましょう。


 最後に、今日のライヴを企画してくれた新代田FEVER & あらかじめ決められた恋人たちへ の皆様へ。(伝わるかどうかわかりませんが、)本当に、ありがとうございました!