DO-MANNAKA de Alternative

走るポップ・リスナー、その魂のゆくゑ

石若駿3days6公演 CRCK/LCKS @新宿Pit Inn

クロスオーバージャズシーンのブライテストホープドラマー(横文字ばっか!笑)、石若駿さんが3日間で6つの別々のライヴを行う企画。その2日目の夜公演である、CRCK/LCKSのワンマンに行ってきました。
CRCK/LCKS、「好き!」と「楽しい!」が満ち溢れたバンドでした。以下、そんなラブとライクにまみれた2時間の記録です。

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開演20:00の直前にPit Inn到着。そこそこ多くの人が入場待ちをしています。私もその中へ…と思ったら、「メール予約の○○ ○○さーん!」と店の方に呼ばれて、そそくさと店内に入りました。病院でも名前を呼ばれない昨今、まさかライヴハウスで名前を呼ばれるとは…笑
Pit Inn初めて行くライヴハウスで、システムがいろいろと新鮮でした。料金が税抜き表示で、細かい金額を払わなくてはならなかったり(この日は3,240円。レジの人、大変ではないかなあ…)、入場後すぐ半強制的にドリンクを受け取らなくてはならなかったり。ちょっと不合理?と思うところもありましたが、これで長年やってきているならよいのでしょう。

入ると早速クロスオーバージャズっぽい音が聴こえてきます(確かWONKだったような)。フロアのサイドエリアで本日の主役・石若さんがDJ中です。
このままジャジーな流れで行くのかな…と思いきや、突然流れてきたのは星野源「桜の森」。確かにブラック的なテイストはありますが、クロスオーバージャズの人がこれを流すのはなかなか興味深いというか、ビックリというか。
ふとDJ卓を覗き見ると、他にもTame Impalaやくるり(石若さんは大のくるりファンとのこと)などのCDが積まれていて、決してジャズだけの人ではないんだな、と思いました。

CRCK/LCKSのライヴスタートは若干押して20:20ごろ。1曲目は「Get Lighter」、もたつき気味のビートとオダトモミさんのキリッとした歌のギャップが気持ち良い。オダさんの蓮舫風ショートヘアーもなかなか決まってます。
序盤は「パパパ!」など、アップリフトな楽曲が多め。ハコの性質上お客さんの年齢層は高めでしたが、リーダーの小西遼が1曲ごとにMCで煽る(w/ビール)のと、フロア中程に結構盛り上がっているファンの方々が集まっていたこともあって、アップリフトな割に落ち着いている…というわけでもなかったです。

「すきなひと」の後、ギターの井上銘さんがアコギに、キーボードのオダさんがグランドピアノに切り替えて"アコースティックの時間"に。小西さん曰わく「僕以外、楽器が置いてあると一生さわり続ける人たち」というCRCK/LCKSのメンバーのみなさん、早速オダさんがグランドピアノで流麗なメロディを奏でてくれます。
このパートでは、30~40分セットではなかなか出来なさそうな曲をたくさん披露してくれました。中でも、石若さんが作ったというクリスマスソングは「石若さん、こんな曲も出来るんだ…!」と思うくらい沁みるポップソング。他にも小西さんが寺山修二の作品に影響されて作った曲(次回作に収録?)も、幻想的かつ可愛らしくて面白かったです。
小西さん、見た目やMCはあんなにチャラチャラしているのに、楽曲では「見上げた電線の間から月が出ていた…」みたいな超ロマンチックな歌詞を書くし、「僕、寺山修二が好きなんですけど」とサラッと言ってしまうあたり、本当に人間って色んな一面があるなあと感じさせられました。

アコースティックの時間が終わり、ここでなぜ開始が押したのかの説明が。どうやらマネージャー(アルバムではエグゼクティブ・プロデューサーと記載されている)の阿部潤さん(ベーア)に死亡説が持ち上がっていたらしく、阿部さんはメンバーをビビらせた罰として「簡単な気持ち」を演奏している最中ステージ上に取り残され、おまけに間奏のドラムソロでショットを呑まされることに笑。ベーアさんは終演後の物販にもいらっしゃいましたが、「あれ?袋どこ?どこ?」と探した結果自分で見つけられず、「歌舞伎町には気をつけろ~!ぼったくられるぞ~!」と泥酔アピールしておりました。こういう面白い人がスタッフだから、CRCK/LCKSも自由な音楽ができている…のかも?

ベーア生存記念祭終了後は一気にラストスパート。ラストの「傀儡」まで、本当にあっという間でした。既に1時間半以上やっているとは思えないほど、新鮮な煌めきがどんどん押し寄せてくる感じです。
アンコールは「クラックラックスのテーマ」。中盤でグッとテンポを落とし、オダさんのウィスパーボイスとともに色気ある雰囲気を醸し出してから一転、一気に駆け抜けて大団円を迎える展開、本当に大好きです。

CRCK/LCKSは凄腕のメンバーばかりが集まっている分、どこか敷居の高さも客観的に感じやすいと思うのですが、実際のライヴや音源はポップな雰囲気で、誰にとっても聴きやすいです(実際、CRCK/LCKSはおろか最近のインディー音楽などにも全く関心のない人に『Lighter』を聴かせたときも、第一声は「ポップだね」でした)。この理由はやはり、バンドを組んで音を鳴らしているのが純粋に好き!楽しい!というのが前面に表れているからでしょう。だからやたらと技術力をアピールすることはなくサラリとやってのけるし、本日の主役・石若さんも自分の好きなくるり星野源なんかJazzに混ぜてDJで楽しそうに回したりするのでしょう。
ひとつ不安なのは、メンバー全員が凄腕ゆえに色んなバンドに引っ張られて(有名なのはオダさんのceroサポート)、CRCK/LCKSとしてそんなに動けないのでは?ということでしたが、ライヴ中に小西さんから「何かを製作中」「来年はフェスにも沢山出たい!」といったポジティブな発言もあったので、これからのCRCK/LCKSにも大きく期待していきたいと思います。