DO-MANNAKA de Alternative

走るポップ・リスナー、その魂のゆくゑ

FUJI ROCK '17 (1) 1日目

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△宿泊した体育館。身長サイズの座布団とタオルケットだけで雑魚寝感が半端なかったですが、単に寝るためだけならこれでも十分でした。

初日はヘヴンのYogee New Wavesからスタート。ヘヴンで始めるのは初めてかもしれません。それだけ今年のヘヴンのラインナップは一発目から充実していました。

・Yogee New Waves (Field of Heaven)
1曲目の「Megumi No Amen」でタイトル通り雨が降り出すも、3・4曲目のカラリとした「Ride On Wave」「World Is Mine」で雨を止ませるという、フェスマジックをいきなり実演してしまったYogee New Waves。
春に観たライヴでは、新ベースの上野恒星さんが一生懸命弾いてはいるもののバンドのグルーヴに噛み合っていない感じがあったのですが、新作・ツアーを経て馴染んだのか、バンド全体の音が自然にハマっていました。上野さん自身も余裕の笑みを浮かべながらの演奏で、観ているこちらもリラックスしながら愉しめました。
これからこの4人で作っていく音が楽しみになる、そんなライヴでした。

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Rei (木道亭)

木道亭は一発目から通路が塞がるほどの激混み。前方は”おじさん”の年代とみられるお客さんが多い。若干アイドル視されているんだなあ。
前半はポップでキッチュな感じ、後半は一転してセミアコのギターを唸らせてRockin' Bluesな感じ。そのギャップで惹こうという意図は感じたのですが、結局、それ、どちらもおじさん向けになってない?と、気持ちは一応若者の私はふと思ってしまったのでした。


・DÉ DÉ MOUSE (Red Marquee)

終盤少しだけ。
いろんな名義を経て、現在はEにアクサン・テギュがついた「DÉ DÉ MOUSE」として活動している遠藤大介さん。てっきりソロかと思ったら、ギター・ベース・ドラムを従えた完全バンドセット。そして遠藤さん自身は超ノリノリのイケイケでした。たぶん今のデデマウス、どんな現場でも行けそうな気がします。


・Rag'n'Bone Man (Green Stage)

UKではチャート1位を獲っているとはいえ、日本ではまだ無名のラグンボーン・マン。いきなりのグリーン抜擢でしたが、さすがに人は少なめ。
バンドに続いて出てきた本人は、想像以上に縦にも横にもデカい。スカートの澤部さんをスラム街で育てたような見た目。しかし声は実にソウルフル。楽曲も、人間のどうしようもない部分を許しを請うように歌う「Human」をはじめとして、ヒトの二面性を同時に表すように歌い、時にラップとして切々と語る。この表裏一体の優れた表現にグイグイ引き込まれました。今回のフジロックでの個人的新人賞です。
しかしまぁ、ホントにデカい。途中、女性コーラスと並んで立つシーンがあったのですが、あまりの体格の違いに「トトロとサツキ…?」と一瞬思ってしまいました(笑)。日本のレーベルはこのデカさをもっとアピールしてセールスしてもいいと思います。

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OGRE YOU ASSHOLE (Field of Heaven)

「黒い窓」〜「フェンスのある家」〜「かんたんな自由」の序盤で、どこに連れて行かれるか分からない迷宮と化したフィールド・オブ・ヘヴン。その先に待っていたのは、豪雨とエクスペリメンタルな音が生み出す”最高の地獄”でした。
いきなりボーカルから始まった「フラッグ」はその分中盤が長く、じわじわと音がブチ上がっていくにつれてお客さんは盛り上がる。雨も激しくなっていく。外国人のお客さんはとうとう脱ぎだす。なんだこの地獄の沙汰のような光景は!しかしステージ上のメンバーたちはいたって淡々と演奏を続ける。すごい。
馬渕さんがギター炸裂させすぎてろくすっぽ弾けていなかった「見えないルール」、テンションが上がりすぎてフロア前方にダッシュで突っ込むお客さんも現れた「ロープ(long ver.)」で(雨なのに)フロアを焼き尽くしたあとは、エンドロールのように鳴り響く「ワイパー」で終幕。今回のオウガ、フィールド・オブ・ヘヴンの歴史に残る凄まじい伝説的ライヴを繰り広げてくれたと思います。


・Route 17 Rock'n'Roll Orchestra (Green Stage)

加山雄三さんが出るというので観たかったのですが、オウガでの雨のダメージが大きかったので移動中に少し観るだけに。
着くといきなりサビで「フジロォ〜ック!」と連呼する曲をやっていて、「いやだからそういうのがフジのダメなところなんだって…」と思いながらそそくさと退散していたら、次に聞こえてきたのは「デイドリーム・ビリーバー」。ああ、やっぱりいい曲です。でも私はGallantが観たいんですすいません。やっぱり他に観たいものがある場合、Route 17は二の次になりやすい。グリーンのトップバッターに戻してもらえないでしょうか?そして若大将は観れずじまい…。


・Gallant (Red Marquee)

フジロック歌うまい選手権優勝間違いなしの絶対的美声。曲の途中だろうがなんだろうが、歌い終わる度に歓声が上がってました。そして幼い頃は日本に住んでいたというGallant、日本語もコミカルに話せる!これは日本で愛されるキャラ。
ただ楽曲がイマイチ陳腐で、印象に残るものがありませんでした。有名DJにfeat.されて名前を売っていくのが今は限界かも。いいサウンド・プロデューサーがつけば良いのですが。


ヒカシュー (Cafe de Paris)

グリーンではRADWIMPSがやっていましたが、私は前前前世よりブヨブヨびろ〜んです。
さすがに皆さん御年齢がアレなので演奏に力はありませんでしたが、その分シニカルさはアップ。池上彰さんに捧げる、として演奏された楽曲のタイトルはなんと「いい質問ですね」。もう巻上さんがタイトル言った時点で爆笑でした。

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・Father John Misty (Field of Heaven)

現代アメリカを「喜劇」として切り取った、音楽千両役者・John Tilman。本国の人気からするとやや小さいヘヴンのステージでも、その役者ぶりを遺憾なく発揮していました。
スーツ姿でプレゼンのように語りかける「Pure Comedy」から、"テイラー・スウィフトと寝てるんだ/VRの世界で毎晩ね゙というヤバい歌詞から始まる「Total Entertainment Forever」と、最新作『Pure Comedy』のリアルだけどいかれた世界観が冒頭からしっかり再現されるステージング。バックのミュージシャンも全員上手い。そして当然に全員正装(ティルマンはMCで「暑ぃ!」と嘆いていましたが、正直「当たり前でしょ!」と思いました)。
観ていきながらふと思ったのは、「John Tilman=アメリカの空気を吸い込みすぎた星野源」説。まるで演じるかのように音楽をやる姿や、元々インディ系のバンドに在籍していて(Tilmanは元Fleet Foxes、星野源は元SAKEROCK)技術力もある点が共通しているかな、と。あと、それぞれの国に
生きる人々の感覚をポップに落とし込む能力も近い。Father John Mistyが一見穏やかながら実は狂気スレスレのところを突いていくのも、今のアメリカらしいと感じました。やっぱり千両役者。


・The xx (Green Stage)

Father John Mistyは泣く泣く途中で切り上げて、今回のフジロックの目的とも言っていいThe xxへ。
手慣らしに1stアルバムのIntroから始まり、ロミーとオリヴァーは早速、演奏しながら社交ダンスのように華麗なターンを決める。最近は世界各国でのフェス出演が続いていて疲れていないか心配でしたが、問題はなさそう。
逆に私の感情には問題ありまくりでした。3曲目の「Say Something Loving」から早くもほろほろ泣き出してしまいます。だって音が綺麗すぎる。愛情・友情を確かめるように繊細に交差していくロミーとオリヴァーのツインヴォーカルも心の蓑に触れすぎてヤバい。今思い出しても泣けてくる…!
そんなこんなでしみじみしていたら、いきなり空気を変えるホーンの急報が。「Dangerous」だ!ジェイミーの鳴らす鋭いパッドドラムがグリーンのフィールドを揺らす…と思ったら、いきなりリズムが変わって「I Dare You」へ。ここの繋ぎはサウンド的にはやや強引ではありましたが、゙あの人は危ないって皆言う/でもそんなの気にしない゙と強気に宣言する「Dangerous」どあなたにも出来る?゙とけしかける「I Dare You」を繋げたことで、The xxのメッセージ性の強さを感じることが出来ました。
終盤はジェイミー無双状態の「Loud Places」からの「On Hold」でダンスタイムへ突入。この展開はある程度予想できたのですが、その流れの中、静謐な雰囲気で始まった「Fiction」も後半一気に展開してクラブ・テイストになっていったのは驚きました。ジェイミーのリミキサーとしての能力の高さを再確認するとともに、ライブの流れや演奏するフィールドの大きさに合わせて楽曲を上手く調理する巧さにも感嘆させられました。
ラストは「Angels」でフロアが一体となって大団円。退場時にはオリヴァーがロミーを支えてステージを後にする姿も見られ、バンドがどれだけ大きくなってもあくまで3人の友情と信頼関係が何より大事にされていることを思い知らされました。最後まで感動の涙に溢れたステージでした。


Queens of the Stone Age (White Stage)

ピュアに感動したThe xxの30分後に、極悪ストーナーロックを聴くことができるヤバさと背徳感!まさしく善と悪の境目をまたいでしまったような気分でホワイトに到着です。
メンバー登場。フロントのジョシュ・ホーミだけでなく、全員デカい。ホワイトステージってこんな小さかったっけ?と思うほど、全員とにかくデカい。これは身体的デカさ(ジョシュは身長193cm)もありますが、それ以上にバンド全体の放つ険しさ・アブなさがもたらしていた部分も大きいかも。
フロアも冒頭から、ライブマナーなんかクソ食らえ!な雰囲気に溢れてました。周囲気にせず暴れまくる者、ペットボトルに移し替えたウォッカを回し飲みして泥酔する者、片手にタバコを持ったまま肩車で踊る者(これは顔に火が当たりそうだったんでやめてほしかった)。ちなみにこれらをやっていたのは全て海外からのお客様です。これが現地流・QOTSAの楽しみ方なんだなあ。
私も前半は「No One Knows」で合唱する程度で比較的穏やかに過ごしていたのですが、中盤「Sick, Sick, Sick」の極悪ディストーションで脳神経が切れてしまいモッシュピット突入。立て続けに「Feel Good Hit of the Summer」で中毒性物質の名前をみんなで連呼。さっきまでThe xxで感涙してたのに比べるとあまりにもバカだなあ(苦笑)と思いつつも、こっちはこっちで最高。善悪のメーターが振り切れてました。
「Feel Good Hit of the Summer」では、ちょうど裏でやっていたGorillazの「Clint Eastwood」をブレイク時にちょこっと歌うというスペシャルも。皮肉もこもってましたが、フジに向けてしっかり準備してくれたんだな、というのが分かる瞬間でもありました。
後半も新曲含め激烈な展開が続きますが、その中で白眉だったのはジョシュが腰掛けてピアノを弾きながら歌うスローナンバー「The Vampyre of Time and Memory」。蒸気を上げながら丹念に歌い上げるジョシュの姿は、依然として怪物の風格を漂わせながらも、どこか強かった人間が過去を懐かしむような哀愁も漂わせていて…なんだか年老いた師匠が厳しく当たってきた弟子に最期に優しく語りかけるような、そんなイメージも感じられました。まあ、この曲が終わったらまたギター持って怪物に戻るわけですが(笑)。
ラストは「A Song for the Deaf」でとことん追い込んで終幕。最後までカッコ良く退場…かと思いきや、ジョシュは杖を持って脚を引きずりながらヨタヨタ歩いてる!どうも膝を痛めていたらしく、その後8月のライブはこれが原因で全てキャンセルに。何度も来日キャンセルしてファンをやきもきさせてきたQOTSAでしたが、実は今回もけっこうギリギリだったんですね…と、最後までいろんな意味でスリリングなライブでした。

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Gorillaz (Green Stage)

QOTSA終わりでぜーはー言いながらグリーンに戻ると、ちょうどアンコールでした。今のゴリラズってアニメーションを前面に出すのではなく、完全にデーモンを主体とした”生身の”ライブをやるんですね。ちょっと特殊感無いかな?とは思いつつ、それでも大人数で鳴らされるハイクオリティな音楽には感嘆させられました。


・yahyel (Red Marquee)

まだ1日目ですが、深夜の部も少しだけ。これからの日本のポップシーンを切り拓いていく最先端にいると思われる、yahyelをレッドマーキーで観ます。
以前、Warpaintのフロントアクトで観たときは音源の良さとは比べものにならないライブの下手さに愕然とし、「yahyelの2軍が来たのか…?」とまで思うほどでしたが、場数を踏んできたことでだいぶ改善されてきた模様。それでもサウンドバランスが悪くて耳が痛くなったり、ドラムも良くなってきたとはいえ、まだまだモタつき気味。技術力さえ上がれば新しい概念で万人に衝撃と興奮を与えられるグループになれると思うので、もっともっと土台をしっかり固めてほしいな、と思いました。

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・CHAI (Rookie A Go-Go)

今年唯一のルーキーステージ。新人勢の中でも、これだけは絶対観ておきたい!と思って向かったら、同じ思いの人が多かったようでフロアは超満員。まともに観られないかも…と一瞬危惧しましたが、放置してある椅子を蹴散らしながら奥に向かったらなんとかステージを目視可能な位置までは到着。
序盤に毎回やる、洋楽ヒットソングの替え歌で自分達のアルバムを宣伝するおふざけタイム、今回はTaylor Swiftの「Shake It Off」。この時点で「ルーキー優勝!」と思いました。だって今の日本の若手で、世界的にヒットしている曲をナチュラルに料理できるアクト、ほとんどいないでしょう。YouTubeやストリーミングサービスを通じて身の回りに溢れるポップ音楽を自分たちの血肉に変えていく力を(爆笑しながら)感じました。
あと、ピンクの衣装ひらひらさせている姿からは想像出来ませんでしたが、演奏がかなりタフ。特にドラムの力強さと、ベースの(キャラクターを含めた)柔軟性。リズム隊がタフなバンドは絶対伸びます。来年のフジロックレッドマーキーか、ホワイトでもいいかな?とにかくお待ちしております。


初日はここまで。とにかくThe xxでの大感動に尽きますが、そこからのQOTSAの悪意溢れるライブも最高に刺激的で、こういう流れを体感できるのがフェスティバルのよいところだと改めて強く感じました。
2日目に続きます。