DO-MANNAKA de Alternative

走るポップ・リスナー、その魂のゆくゑ

Summer Sonic 2015 (1)〜ソニマニでさよならEDM編

サマソニに行きました。
今年は前夜祭にして「サマソニ0日目」的な立ち位置になってきたSonic Maniaから、1日目、1日目深夜のHostess Club All-Nighter、そして2日目の最後まで、きっちり全て参加させて頂きました。いわゆる「フルソニ」というヤツです。
観たアクトは、チラ見も含めると全部で42組。当然一気には書ききれないので、4回に分けて書こうと思っています(ちゃんと書き終わるかな…)。
ではまず、Sonic Maniaからです。

Perfume

 2年前のSonic Maniaが低音バキバキだったので、それを再現できればProdigyにも勝てるんじゃないか?…と思いましたが、今回は縦にバウンスさせる音が強め(すなわち、EDMに近い音)だったため、あまり身体の芯まで残るライヴではなかったです。最近は屋外フェスが中心で、きゃりぱみゅ関連の仕事も多いのでヤスタカ氏がソニマニ向けのミックス作業をする余裕がなかったのか、あるいはもう完全にEDMに寄せていくつもりなのか。まあ「NIGHT FLIGHT」が聴けたのは嬉しかったですが。
 そんなわけで音的には不満はありましたが、あ~ちゃんのマイクパフォーマンスは今回も無敵の自由度。2年前も「ソニックマニアは、べっこう飴の匂いじゃ!」という迷言を残してくれましたが、今回は毎度恒例のグループ分けで本領を発揮。最初が「マ!」で来たので「マ」「ウン」「テン」だな…と思いきや、次はなんと「ウンテン!」。う、うんてん???言わせているのっちでさえ首を傾げるほどの語呂の悪さ(笑)。最終的に「マ」「ウンテン」「ステージ」でグループ分けされましたが、この誰も思いつかないようなことをひょうひょうとやってのけるあ~ちゃんの凄さ、恐れ入りました。

Madeon

 Perfume終わりで大混雑のマウンテン出口を抜け、後半からフロアに参加。2台のグリッドコントローラを器用に操作し、時には自ら歌うその姿は「EDM系DJ」というよりも「アーティスト」。このあとのPorter Robinsonもそうなのですが、EDM全盛の流れの中から離脱し、本来のエレクトロ・ハウスの高揚を追求しようとしている若いアーティストが活躍し始めているのは嬉しいことです。

Boys Noize

 10分くらいしか聴けませんでしたが、乱暴なBPM操作も堂に入っていて、チンピラ・ディスコの真骨頂が垣間見られました。Porter Robinsonと被っていなかったらもっと聴きたかった。

Porter Robinson

 Skrillexから「若きエレクトロ・ミュージック界の救世主」などと言われているそうですが、何のことはない、ただのネット依存のアニヲタ・ゲーヲタでした。ClariS「コネクト」ややなぎなぎ「春擬き」のマッシュアップ、「あの夏で待ってる」からのセリフの引用(フレーズが出てきてなんだこれ?と思って調べたらすぐに出てきた)、ゴジラの鳴き声のカットイン、ゼルダの伝説などのゲーム画像の挿入、顔文字や「www」が出てくる8bitな映像など、もう日本のヲタ歓喜なネタばかりで何度も爆笑。しかしミュージシャンシップも超一流で、自ら弾くシンセのメロディは抜群に良かったし、アニソンのマッシュアップも音の流れだけとらえれば極めて自然でした。
 きっと彼もオタク=偏執狂としての孤独感を抱えていて、多くのオタクたちはそれを自家中毒的なアイロニズムに押し込み自分自身を納得させたりすることで内へ、内へと向かっていってしまう。しかしPorter Robinsonはその孤独の種を思い切って外に出してプラスの表現に変えることで、大輪の花を咲かせることに成功している。この構造はでんぱ組inc.にも近いものを感じましたが、Porter Robinsonはそれをとことん世界規模でやろうとしている。しかも、たったひとりで。まあ才能もあるんでしょうが、人間、開放的な心があればここまで出来るんだな…と、なんだか勇気まで貰えてしまうダンスミュージックでした。

The Prodigy

 今回のヘッドライナー的扱いのThe Prodigy。1曲目の「Breathe」から早くも低音の音圧がものすごい。加えて、キースとマキシムの怪物的なパフォーマンスも、ステージからの圧力に拍車をかけている。プロディジー、確かに踊れるサウンドではあるんですが、ただタテとヨコに身体を動かすだけではなく、圧力に負けないように前方にも向かっていないと吹っ飛ばされてしまうのではないか…と感じるくらい、ヤバいライヴサウンドでした。そしてこの狂気のライヴを締める曲が「Take Me To The Hospital」というのも、ある意味良いオチになってました(笑)。
 The Prodigyは首謀者のリアムが近々の引退をほのめかしているので、もしかしたら今回のツアーで見納めになってしまう可能性もあります。これだけバキバキのライヴをしておいて引退とかありえんでしょ、と思うのですが、確かにこれだけのクオリティのものを創り続けていくのは年齢的に苛酷だろうなあ、とも思います。なんとかして後継者が出てきてほしいところ。でも、最有力だったPendulumもEDMのシーンにホイホイついて行っちゃったしなあ。うーむ。

電気グルーヴ

 タイムテーブル的にライバル不在で大入りだった電気グルーヴでしたが、フロアの反応は相当良くなかったです。スタートして歌い始めの曲が「Shameful」で「またぁ?ここ3年くらい、この流ればっかりじゃん」というガッカリ感が広がり、その後に続く曲も最近の曲ばかりでフロアが全く乗り切れない。「FLASHBACK DISCO」で一旦は持ち直しますが、そこから最後の「スコーピオン」に至るまでの流れがとにかく古臭く、なんだか惰性で踊っているうちに終わってしまった、という感じです。
 ソニックマニアというイベントの特性を考えたうえで、あえて「Shangri-la」も「N.O.」も外したセットを組んできてくれたと思うのですが、結果的に電気グルーヴの自由度を大きく損なうパフォーマンスになってしまったように感じます。ピエール瀧さんもいつもの「担当:瀧」としての役割を果たせていなかった(仮装も無かったし、叫んでも音につぶされて何言ってるか全然分からなかった)。別に深夜のクラブ系イベントだからといって、キャラクターまで潰す必要はなかったのでは。過去のエレグラとかではそんなことなかったのになあ。Perfumeが頑張っていただけに、ちょっと悪目立ちしてましたね。
ただ、ステージの制作チームはいい仕事していたと思います。特に照明・レーザーは素晴らしかったです。フロア右側の装飾にまでロゴをレーザーで投影するあたり、単純にすげー!と思いましたし、よく練ってきたんだろうなあ、と感じました。今回のサマソニは全体的にステージ演出が素晴らしかったですが、電気グルーヴのときの演出は特に良かったです。

Krewella

 昨年のソニマニで観て「これはありえない!」と思うくらい酷かったクルーウェラでしたが、1年で随分変わってました。特に大きなポイントはドラム+ギターの生楽器導入。音質がかなりハードになり、従来のパーティEDMからはずいぶん進化した領域に達していたと思います。
 曲構成が凡庸すぎたので最後まで観ることはなかったですが、彼女たちもMadeonやPorter Robinson同様「EDMシーンからの離脱」を画策していることが見て取れました。今回のサマソニ、集客面ではZeddがNo.1でしたが、そうした「日本でのEDMシーンの活況」とともに「海外でのEDMシーンの変容」も同時にプレゼンテーションされていて、とりわけSonic ManiaはEDM変容後の「新しいエレクトリックミュージックへの動き」や「本来のエレクトリックミュージックへの回帰」が強く映し出されていたラインナップだったと思います。結果的に動員はやや減でしたが、そうしたシーンの反映と攻めの姿勢がある限りは今後も行きたいし、続けていけると思います。

Valy Mo

 明日以降のこともあったので、個人的には「オマケ」のアクト。寝ながら聴きました。最後だけちょこっと踊りましたが、DJなのに突然パッド乱打しだしたりして、やっぱりフランスのアクトってどこか不思議だよなー、と思いました。

 4時半にメッセを出発、ガラ空きの東西線で40分+帰宅して1時間の睡眠をとり、サマソニ1日目へ。次のエントリに続きます。