DO-MANNAKA de Alternative

走るポップ・リスナー、その魂のゆくゑ

Summer Sonic 2014 (1)EDM vs エレクトロ・ロックのSonic Mania編

 まずはSummer Sonic15周年おめでとうございます。「運営がクソ」「ブッキングが媚び過ぎ」「フジロックを見習え」などと常に罵倒され続け、年々世界中で増え続ける音楽フェスの煽りを受けながらも、世界のトップクラス・アーティストを招聘するためにあれやこれや頑張り続けてこられたCreativemanの業績は讃えられてしかるべきものと思います。
 今年は何といっても、UKだけでなくUSの音楽フェスのヘッドライナーも担えるようになった「2010年代におけるロックバンドの代表格」、Arctic Monkeysが出る!!!しかもその裏のSonic Stageには、2013年のコーチェラフェスティバルのヘッドライナーであるPhoenixも出ちゃう!!!ということで、業績だけ考えればArctic MonkeysPhoenixが同じ時間帯に出るという半端なく豪華なフェスである、という評価も可能だった今年のサマソニ。まあこの2組の活躍を知らない人たちにとっては、相変わらずのクソ評価を下されているんでしょうなあ。まあそういう人たちは、永遠にブリットポップなり産業メタルなり聴いて、時代の彼方で幽閉されてくださいな。
 さて、今年も昨年に引き続き前夜祭(位置づけとしては"サマソニ0日目"と言ったほうが近い?)であるSonic Maniaからサマソニ2日間まで、ほぼフル参加してきました(昨年トライして撃沈したMidnight Sonicは、今年は回避)。3日間で観たアーティストの数は36と膨大な数に上るので、ここでは1日ずつ分けて、記録を残しておこうと思います。

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1)Kraftwerk @ Crystal Mountain ★★★★★★★★☆☆

 昨年は初音ミクという飛び道具からスタートしたSonic Maniaでしたが、今年も視覚的に飛び道具ともいえるKraftwerkから始まりました。
 昨年の来日公演は年齢層が高めだったこともあってお客さんは割とおとなしめでしたが、今回は相当平均年齢が下がっているので、開演時のヴォコーダーヴォイスが聞こえた瞬間からフォーッ!ウォーッ!と大盛り上がり。「The Robots」で立体的に動くロボットや、「Spacelab」でこちらに向かって飛んでくる衛星に大歓声で応えるなど、目玉の3D映像も盛り上がりに拍車をかけていました。
 全体的には昨年日本でも実施した「Kraftwerk 12345678」を抜粋した感じのライヴ。前半は『The Man Machine』および『Computer World』というクラフトワークのパブリック・イメージに近いアルバムからセットリストを組み、後半はオールタイムベストに近い形に持っていく流れでした(セットリストはこちら)。
 トピックはやはり、日本でやるとどうしても注目を集めてしまうこの曲「Radioactivity」。"日本でも放射能 いますぐやめろ"というセンセーショナルな日本語詞を2011年以降歌い続けている彼らですが、今回は曲に入る前にこの日本語詞の監修役を務めた坂本龍一氏が癌で入院したことに触れ、ラルフ・ヒュッターが珍しく生声で励ましのメッセージを送っていました。坂本龍一さんの 早い回復を お祈りしています」…めったに喋ることのないクラフトワークのメンバーが、このような場で想いを述べることの重要性と、メッセージそのものの優しさに、少しほろっときてしまいました。
 楽曲の印象としても「Radioactivity」が最も良かったです。とにかく他の曲に比べて低音の響きが桁違いに重い。ズゥンッ、と身体に響いてから更にビリビリッと震えを起こさせるような低音。これはまさしく、クラブのサウンド。過去の楽曲を継承しながら、うまく現代のエレクトロ・ミュージックの要素を取り込んでいるあたり、おじいちゃんの年齢になっても全く感性が衰えていない。クラフトワーク、やっぱり凄いです。
 他の楽曲も踊れるエディットになっていて、Sonic Maniaというイベントの初っ端にもふさわしいアクトでした。個人的には昨年の来日公演に行ってしまっているので、セットリストや3D映像にもう少し新しい要素も欲しかったなーと思いましたが、終わった後の充実感は十二分でした。


2)Congorock @ Hard Stage ★★★★★☆☆☆☆☆

 今年はRainbow Stageがアメリカのフェスティバル・チーム、HARDとのコラボで「Hard Stage」と名付けられていました。その1番手がCongorock。基本的にはEDMですが、Fool's Gold所属ということもあって南半球のテイストもチラッと感じさせる味のあるサウンドでした。これだったらガチ上がってもいいかなーと思いましたが、まだ日を跨いでもいない時間帯、ちょっとガチ上がるには早すぎる。というわけでSonic Waveへ移動。


3)Krewella @ Sonic Wave ★★☆☆☆☆☆☆☆☆

 Hard StageのCongorockに比べて全く味の無いサウンドだったのがクルーウェラ。音圧が乏しく、ただタテ乗りさせるだけの能無しバカ騒ぎ音楽で、周囲を見回すだけでゲンナリ。せっかくパンチ力のある姉妹がいるのだから、マイクスキルで面白味を出してもいいのに、そういうわけでもなくただ薄っぺらなEDMを垂れ流すだけ。まあこれでも"流行り"の範疇には収まるのかなあ。ちょっとうんざり。


4)サカナクション @ Crystal Mountain ★★★★★★☆☆☆☆

 前に出たクラフトワークのスタイルをしっかり継いで、「Ame(B)」から「ミュージック」まではお馴染みの卓上PCセット。ガンガン踊れるエレクトロサウンドにレーザーもビュンビュン飛び交って、さながらレイヴパーティの様相を呈します。さあ皆さん、これは踊るでしょー!…と思いきや、私のいたフロア中間PA横あたりのお客さん、「サンプル」のストイックな展開に対して見事にぽかーんとした表情で棒立ち。格好をチラ見してみると、アーティストグッズやらRIJFのTシャツやらで身を固めている人がほとんど。それで「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」のエレクトロ・ミックスが始まると縦ノリしはじめるもんだから、もうこれはダメだと見限って後方へ移動。そしたらTAICOCLUBで観たときと似たような、自由に踊る空間が出来ていたので「三日月サンセット」以降はここで楽しみました。
 総合的には楽しいライヴではあったのですが、やっぱりお客さんの反応に煮え切らない部分がありました。バンドについても、「レイヴカルチャーを広めたい!」という啓蒙思想は感じるものの、その中で1番であり続けたいというような強い意志が感じられる音ではない。このへんが、いまいちサカナクションというバンドに乗り切れない要因である気がします。Kasabianのような強気な姿勢を、サカナクションも持ってくれたらいいのになー。


5)Zedd @ Sonic Wave ★★★★☆☆☆☆☆☆

 ものすごい人いきれでしたがフロア後方でもきちんと音が響いていて、先程のKrewellaとは違う本格的なDJだと確信。にしても、使う曲がSkrillexの「Recess」にDisclosureの「Latch」にCalvin Harrisの「Summer」にIcona Popの「I Love It」にと、どんだけ話題のヒット曲ぶっこみまくるんだよ!というくらいに立て続けにぶっこむぶっこむ。周りのお客さんも「あ、この曲好きー!」とイントロで反応して大合唱!みたいな流れが止まらず、さながら壊れたジュークボックス状態。
 私も軽くアガりながら、ただしかし、「このEDMカルチャーって、意義あるの?」と思ってしまったのも事実。我を忘れて盛り上がって、その先に一体何が残るのか…。先刻にKraftwerkのライヴを体感していたり、Daft Pank『Random Access Memories』のような作品を日頃愛聴しているが故に、ふとこういうことを思ってしまったのですが…。
 それでも個人的にはEDM文化、長生きしていってもらいたいです。Zeddも早い時間帯でDaft Pankの「One More Time」を使ったみたいですし、EDM流の"速さ"と"力強さ"で時代にとらわれずに数多の楽曲の間を駆け抜け続けてほしいなあ、と願っています。


6)DJ Snake @ Hard Stage ?(ちょっとしか観てないので)

 様子見。こちらもEDM。Yeah Yeah YeahsのHeads Will Rollを流していたこと以外、あまり印象にないです。


7)Kasabian @ Crystal Mountain ★★★★★★★☆☆☆

 さあグラストンベリーのヘッドライナーがSonic Maniaに降臨だ!これはヤバいことになるぞー!!…と意気揚々とMountainに向かったら、開始5分前なのにフロアが半分くらいしか埋まっていなくて思いっきりズッコケました。そんなに皆さん、Zeddと2manydjsのほうが良いですか…。まあ確かに、ソニマニは"踊るためのフェス"だとするならば、Kasabianは前の二者と比べて分が悪いことは事実ですけどね。
 そんなわけで、序盤は明らかにフロアの熱が燻っておりました。前回の単独来日時にStudio Coastで観ていますが、その時と比べるとフロア全体の熱狂度が全く感じられません。「Shoot The Runner」も「Underdog」もイマイチ盛り上がらない。まあZedd行かないで前方待機していれば良かったんでしょうけど、トムもサージも好調そう(なんだか時折イチャついてた?)なだけに、あまりの空回りっぷりに何故かこちらがあたふた。ど、どうしよう…。
 状況が変わり始めたのは中盤の「bow」あたりから。サージ(※変なTシャツ)のボーカルによるサイケトラックで一旦バネを溜めてから、「Club Foot」〜「Empire」と初期の代表曲に繋ぐ流れが見事な着火剤になりました。そしてラストの「Switchblade Smiles」〜「Vlad The Impaler」〜「Fire」、ここはもう大爆発。他のフロアがセットチェンジに入ってお客さんがMountainに集まってきたこともあって、ようやくカサビアンらしい、大観衆の中でのライヴになりました。
 今回のカサビアン、振り返ってみるとやっぱり横綱相撲」という言葉がしっくりくるライヴでした。なんだか序盤にお客さんの入りを気にしてそわそわしていた自分が恥ずかしくなるくらい、彼らは常に堂々としてました。昨年のストーン・ローゼズの時にも思いましたが、やはり自信を見せなきゃヘッドライナーの位置には立てません。それは、どんな状況においてでも。ひとつ勉強になりました。

▽変なTシャツ


8)Mogwai @ Crystal Mountain ★★★★★★★★★☆

 Kasabianで燃料をだいぶ消費してしまったので、ちょっとお休みしてからのモグたん。
 Mogwaiはここ最近の作品をあまり追っていなかったので知らない曲が多かったのですが、それでもモグワイ印ともいうべき圧倒的な轟音と旋律でこちらを驚かせてくれます。また、ひたすらギターの轟音でクライマックスに持ち込むだけでなく、ボーカルを入れてみたり(Mexican Grand Prix)シンセのビートで踊らせたり(Remardered)といった実験性もあり、さらには一曲終わるたびに「アリガト!サンキュ!チアーズ!」と酒好きの一面を覗かせる(笑)など、意外とポップな印象を持ちました。そんな「ユニークさ」「とっつきやすさ」の中でぶっこまれる轟音の世界…これはもう、体感してみないと分からない、究極の感動です。丑三つ時を過ぎて、こんなに恐ろしいほど素晴らしい体験ができるとは思いませんでした。今回のソニマニ、ベストアクトは彼らです。
 Mogwaiに対して、CDで聴いている限りでは「なんでこんなインスト音楽で、デカいステージ任されるんだろう?」と失礼な疑問を持っていたのですが、今回のステージでその理由がはっきりしましたね。今回のサマソニで3回ステージを踏み、Hostess Club Weekenderでも今年1回来日しているので、しばらく再来日のチャンスはなさそうなのが残念。早く新作作って、またツアーで来てほしいです!


9)the telephones @ Sonic Wave ?(1曲しか観ていない)

 Mogwai終わりに移動して、「Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!」の1曲だけ観れました。この曲はテレフォンズの中でも真摯な曲で、結構好きです。ソニマニの締めがこの曲でよかったです。
 それにしても、EDMのお客さん、ゴミ散らかし過ぎ。