DO-MANNAKA de Alternative

走るポップ・リスナー、その魂のゆくゑ

下北沢インディーファンクラブ2013

 ようやく何か書く気になってきたので、今更ながら6月23日に行われた下北沢インディーファンクラブ2013を振り返りたいと思います。


 このイベントへの参加は昨年に次いで2回目。カクバリズムとギャラクティックという2つのレーベルによる企画で、両レーベルに関わりのあるアーティストに加えてシモキタ周辺の新進気鋭アーティストがとにかくわんさか出てくる賑やかな街中イベントです。今年は関西インディーシーンの盛り上がりを反映してか、例年に増して関西(特に京都)からのアーティストが多かったように思います。韓国からもアーティストが招かれ、ひとつひとつの会場規模は小さいものの様々な都市のサウンドが交錯する多様性のあるイベントになっていたと感じました。踏切もなくなって開放感が増した、今のシモキタにぴったりのイベントかも?


 この日、私が観たアーティストはoono yuuki→OGRE YOU ASSHOLE→トリプルファイヤー→嫁入りランド→(((さらうんど)))→鬼の右腕→Teen Runnings→YOLZ IN THE SKY→THE OTOGIBANASHI'S→洞→neco眠る→Wedance→5lack→T字路s→曽我部恵一BANDcero三輪二郎の計17組。移動しまくりで疲れました。。。以下、よかったものをいくつかピックアップします。


OGRE YOU ASSHOLE(13:00〜13:30 @GARDEN)
 最近のサイケ路線を30分枠にも無理やり押し込み、「素敵な予感」「ロープ」の2曲をそれぞれLong Ver.で披露してあっさり去って行ったオウガ。それでも技術力、表現力はこの日観たアーティストの中で群を抜いていました。「ロープ」のラスト、音の洪水がダイナミックに押し寄せてくるところでは色んな光景が頭の中でフラッシュバックして、なぜか泣きそうになりました。もしかしたら涙ちょちょ切れていたかも。昼間の超体験。

トリプルファイヤー(13:50〜14:20 @ReG)
 スカートのレコ発ライヴ等にも呼ばれるバンドということで前々から注目していましたが今回が初見。ボーカルさんのナヨナヨキャラとJoy Divisionを彷彿とさせる硬派な演奏のギャップが凄まじく、会場は爆笑&失笑の嵐でした。悪口言われたから次こそは殴る、今度こそ殴ってやると散々言いながら結局殴る勇気が持てず妥協してしまう、という歌詞の曲が(なんか奇妙な方向性の)カタルシスを生んでました。

嫁入りランド(14:30〜15:00 @無印良品屋上)
 多幸感の阿片窟から這い上がってきた(※オフィシャルTwitterより引用)郊外在住独身女性3人組によるヒップホップユニット。「無印店員の休憩中の雑談」というコンセプトは前情報として仕入れていたのですが、あまりに自然にハマりすぎていて、最初無印の店員さんがサービスで前説してくれてるんだと勘違いしました(爆。ライヴは独身女子3人がその日常をやたらエネルギッシュにラップしていくというもので、やってるほうも観ているほうも楽しいのだけど、何故か独身女性特有の物悲しさがこみ上げてくるという不思議さ…。どうか幸せになってくださいね!

(((さらうんど)))(15:00〜15:30 @GARDEN)
 無印屋上から急いで移動、おまけにインファン名物・入場規制に引っかかり後半しか見れず。しかし「ポップユニットとしての成長」を十分に実感できるライヴでした。1stリリース後に2回ほど観たライヴでは「曲は良いけどどこか散漫かな?」という印象を受けたのですが、この日はしっかりステージがまとまっているように感じました。鴨田さんもトラックス・ボーイズのお二人もキャリアはあるものの、(((さらうんど)))は各人にとって新たな挑戦だっただけに、このメンバーでもう一枚アルバムを作れたことで一気にユニットとしてのまとまりが出てきたのかも。新作「New Age」、まだ聴けてないので早く入手したいところです。

鬼の右腕(15:50〜16:20 @Daisy Bar)
 「ダーク・トロピカ」と表現して良いのでしょうか?ベース・ドラム・ギターのバンドサウンドにスティールパンの音色と民族系のヴォーカルが乗る女性4人組。カリビアンな雰囲気もあるような気はしますが、あくまで陰性。大抵スティールパンといえば明るい屋外で陽気に鳴ってるイメージがありますが、こういう暗い雰囲気にも合うんですね。The xxもあの音楽性でスティールパンの音を使ってみたりしてますし。…そういえば、フジロックはThe xxと同日出演ですね。おめでとうございます。当日も「今のはじゃがいもの歌です」とか言って観客を良い感じにズッコケさせてください!

Teen Runnings(16:20〜16:50 @ReG)
 まんまアメリカ西海岸インディーロックでした…というのは音源聴いて大体分かっていたのですが、ライヴのスタイルは予想外にひねくれまくり。全11曲(たぶん)、時間も無いのに全曲間でMC入れるという無謀ぶり!「海外の通販サイトでAir Max買ったら中国製の偽物だった」というとりとめのないものから「インディーファンクラブですか…ま、巨乳まんだら王国とか、Fear, and Loathing in Las Vegasとか出てませんけど」という意味不明なものまで淡々と語り、3分くらいある曲をやったら「今の長くてすみません」と謝る。しかも全て無表情。ある意味クールジャパン。Wavvesが単独来日したら、前座は彼らでお願いします。

(17:30〜18:00 @無印屋上)
 信州の冬の空気をそのまま音に変えてしまう、信州インディーの至宝2人組バンド・洞。とても丁寧な音づくりで、特にグレッチのファルコンっぽいギターの音色が沁みました。…が、途中から夕立が来てしまい、唯一の屋外ステージである無印屋上を直撃。演奏中断等はなかったものの、雨がザーザー降る中でのライヴはさすがに集中できませんでした。めったに観れるバンドではないだけに、この天のいたずらにはかなり参りました…。ひとまず、雨が降り始めてすぐに置き傘を大量に持ってきてくれた無印の店員さんにはこの場を借りて感謝を。

Wedance(18:40〜19:10 @shelter)
 インディー好きの間でもまだあまり韓国インディーは浸透していないのか、お客さんはかなり少なめ。しかもステージ前方は次の片想い待ちとみられるお地蔵様方ばかりで、環境は劣悪。それでもモジモジもっさり女子とロンゲキャップの怪しいお兄ちゃんの2人組、しっかり爆発してくれました。ステージ上、踊る踊る!これはフロアも…あれ、踊ってない。ちょっとみんな、素直に踊ろうよ!と言いたくなりましたが、これが音楽の上に横たわる国境の壁なのかな、とも感じました。音楽に国境なし、とはよく言いますがこういう現場では結構国境の存在を感じるものです。この日のWedanceも、日本人ばかりのイベントだからこそ感じる「壁」がありました。楽しかったけれど、悩みが深まるライヴ。

cero(21:10〜 @GARDEN)
 この日のceroは「特殊サポーター」であるMC.sirafuとあだち麗三郎の両名を欠いた特殊編成。バンド名もいつもの「コンテンポラリー・エキゾチカ・ロック・オーケストラ」ではなく「コンテンポラリー・エクレクティック・レプリカ・オーシャン」と紹介されていました。つまるところ名は体を表すといったところで、打ち込みを多用した新曲のお披露目など、GARDENはさながら音楽実験室の様相。最大キャパのハコのトリなのだからもっとストレートにやってもよかったのでは…とも思いましたが、これはこれでバンドの底力を見れる貴重な機会になりました。9月のワンマンが楽しみです。


 そんなこんなで楽しく、充実していた下北沢インディーファンクラブですが、ひとつ不満というか、奇妙に思っていたことがあります。
 それは「観客が全然踊らない」こと。
 Wedanceの項でも書きましたが、踊れるのに踊らないお客さんがとにかく多かったです。これは私だけでなく、ツイッターのフォロワーさんも嘆いていましたし、ceroのライヴの際に「なんで盛り上がらないんだよおおお」と半ギレしているお客さんもいて、一部ではありますが雰囲気に違和感を覚えている人はちょくちょくいた模様です。
 最近「○○のライヴを観た、××のライヴを観た、という積み重ねが音楽好きのステータスと化している」という意見がありますが、この日の参加者の中にも「○○を観たから満足」、「××を観た、と言えればいい」という人は多少なりとも居たと思います。とりわけサーキットイベントは「見本市」的な側面もあるのでそういう意識は分からないでもないですが、やはりライヴはアーティストとオーディエンスが共に作り上げていくものだと思うので、お客さんもやはり身体で反応できるところは素直に反応してライヴ全体の熱を上げていったほうがいいのでは。特に「踊る」という行為は原初的でわかりやすい行為ですから、ガンガン踊ってあげましょうよ。来年はもっと賑やかなインディーファンクラブ、期待してまーす。