DO-MANNAKA de Alternative

走るポップ・リスナー、その魂のゆくゑ

Red Hot Chili Peppers 「I'm With You」

優しさと温もり、そしてRHCPらしい熱量の高いサウンドが合致した傑作だと思います。ダテに年取ってないですね。新ギタリストのジョシュ・クリングホッファーも、アンダーグラウンドの香りを漂わせつつもひょこっと前方に飛び出してくるところが面白いです。脱退したジョン・フルシャンテとも近からず遠からずといった感じのプレイで、私はすんなり受け入れられました。

マイ・ベストトラックは「Brendan's Death Song」。人の死を扱っているにも関わらず、徐々に空に向かって浮かび上がっていくような曲構成にはどこか爽快感のようなものも感じられました。他、「Monarchy Of Roses」は混沌状態から一気にクリーンになる瞬間がたまらなく気持ち良いし、「Look Around」はもう盛り上がるしかない!といった楽曲で、これを聴いただけで単独来日を期待したくなる。「Did I Let You Know」からはバンバン新機軸が飛び出し、締めの「Dance, Dance, Dance」まで、新しいRHCPをこれでもか!と魅せつけてくれます。素晴らしいです。

あと、これはアルバムを買った人だけにしかわからないのですが、ブックレットの最後のメンバー写真。これが凄くいい。この一枚を見ただけで、「ああ、今後のRHCPは、きっとすごいことになっていくんだろうな」と直感しました。「Californication」のブックレットに載っている、ライヴ前に肩組んでいる写真を見たときと似たような感覚。ジョンが92年に辞めてからデイヴが加入した時と違って、今回のジョシュ加入はRHCPをさらに前へ前へ進めていくのではないか。そんな気がします。



では一転して、音楽シーン全体から見た「I'm With You」について。

今回のアルバムにおける、西海岸メインストリームのメロディとリズムにパーカッション等々で南半球風味の味付けをしたり(Ethiopia、Dance, Dance, Dance等)ピアノを多用してポップにしたり(Happiness Loves Company、Even You Brutus?等)といった意匠が2011年現在の音楽シーンにおいて受け入れられやすいものかと問われると、正直疑問に思います。今は良くも悪くもフェス受けするノリの良い音楽か、チルウェイヴ/グローファイに代表されるベッドルーム系音楽かに二極分化されているように感じる*1のですが、今回の「I'm With You」はそのどちらにもあてはまらない、まるで離島のような作品。今後、RHCPは離島の住人としてさらに遠くへ遠くへ向かってしまうのか、それとも二つの大陸の中から島に向かって人が流れて行って、新たな大陸を形成するのか・・・。おそらく今回のラインナップでまた新しいアルバムを制作することになるでしょうから、その時が大きな分岐点になると思います。

個人的には「Blood Sugar Sex Magik」で時代を切り拓いたときのような動きが、ゆっくりでいいからもう一度起きて欲しいと思うのですが、なにせRHCPはもう平均年齢50歳間近のオジ様たち。なので、もうあんまり無理しないでやりたいことを思いっきりやって頂くだけで十分かな、という思いもあったりします・・・。

*1:他にもX-Factor発みたいなのもありますが、あれはもう音楽として見たら真面目にやってる人たちに失礼なので無視