DO-MANNAKA de Alternative

走るポップ・リスナー、その魂のゆくゑ

Q2 年末イベント(MASS OF THE FERMENTING DREGS, etc) @下北沢GARAGE

ライターなどで活躍している三宅正一さんオーガナイズのイベントで、今年のライブ〆め。

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このタイムテーブルからも分かる通り、マスドレが(ゲストを除いた)トップバッターにしてヘッドライナー。
私も昨年、同じ下北沢GARAGEでマスドレの4年振りの活動再開ライブを観て、それ以降「また観たい!」と思いつつもなかなか機会が合わなかったので、ここで1時間とってくれたのは嬉しかったです。

ライブは「RAT」「かくいうもの」と爆走する2曲で荒々しくスタート。そこから少しポップな「まで。」、タイトルに反して尖りまくる「サイダーと君」と、爆音の中に様々な表情を見せてくれます。ここまでの3人の演奏は言うことなし。昨年のライブはやはり探り探りで、小倉さんのギターにもやや違和感があったのですが、今日は自信満々のプレイで、ギターの音も自然に溶け込んでいるように感じられました。ドラムの功さんも、メガネを飛ばしながら叩きまくる。

フロアの方は一応”ソールドアウト”とのことでしたが、みなさん観たいアクトに合わせて来ているのと、各々の都合があるので(私もマスドレ後はCICADA少し観ただけで時間切れ)、昨年のように満杯ギュウギュウではなく、ややゆとりある感じ。モッシュが起きる気配もなかったですが、熱心なファンの方々がガンガン頭振ったり長渕ばりの拳突き上げで応戦していて、私も安心して盛り上がれました。

中盤からは新曲も。最初にやった曲(「だったらいいのにな」?)はマスドレにしてはパンクな曲調だけれど、菜津子さん&功さんによるポップなコーラスも印象的。続いて、ステージに出てもまだやるかどうか迷っていたという初披露の「シガー」(セットリストにも「ONEDAY or シガー」と書かれていました)。菜津子さんの女性っぽさと、バンドの強さの両面が押し出された一曲で、お客さんからも「めっちゃいい曲…!」というつぶやきが漏れていました。確かに、本当いい曲。早急に音源化希望です。

初披露の曲のあとは、再始動後はほとんど?全く?やっていないはずの「さんざめく」!初期からある曲ですが、音源としては現時点で最も近作の『ゼロコンマ、色とりどりの世界』のラストに収録されているという、活動停止前のマスドレの歴史を集約するような一曲。これをやってくれたのは胸熱でした。

続けて「エンドロール」。この曲が今日最も「マスドレ、完全復活!!」を感じた曲でした。歌無しで10分近くある曲ですが、全くひとときも集中力が切れずに、こちらをジワジワと引き込んでいく。一年前、同じステージで自分の曲のコードが分からず苦笑いしていた人と同じ人がいまここで演奏している、というのがちょっと信じられなくなるくらい。

最高の「エンドロール」のあとは、少々告知タイム。3ヶ月ごとに日曜昼にワンマンをやること(活動停止前のファンが社会人になってなかなか平日や日曜夜に来れなくなっていることに配慮して、とのこと*1 )、そして待望の音源リリース(7inchシングル)。そこに収録される「スローモーションリプレイ」は、もともと菜津子さんが弾き語りでやっていたこともあって、歌メロが激烈にポップ。しかしきちんとマスドレの曲になっていて、改めてこの3人の音が揃うと凄いんだな、と実感。ちなみに7inchはライブ会場と大阪のFLAKE RECORDSでの500枚限定販売とのこと…はたして、買えるでしょうか?いや、なんとかして買う。

終盤は「delusionalism」と「ワールドイズユアーズ」で大疾走、ラストは絶対の「ベアーズ」。菜津子さん、変わらずのカスタネット両手持ち。そして、フロアを一瞬一瞥。

「くる・・・!」

と察した私は両手で猛アピール、見事に菜津子さんの手から私の元へカスタネットが飛んできました!!8年ほど前、柏のライブハウスでゲットして以来2個目のカスタネットです。嬉しい…!

そして「ベアーズ」は今日イチの爆発力、締めは菜津子さんが裸足でバスドラに乗っかって猛烈なラッシュを決めて完遂。素晴らしかった…!

マスドレは、例えば「まで。」や「サイダーと君」のように、曲の中にいろいろな感覚を含めて、それらを丸めて一気に聴衆にぶつけてくるワザが年々巧みになっていたように感じていましたが、それが活動停止でストップしてしまった。今回、バンドが再び動き出したこと、加えてメインライターの菜津子さんもある程度年齢を重ねたことで、様々な生き方の”色”をより多く楽曲に加えてくるような気がします(菜津子さんとほぼ同世代である宇多田ヒカルさんの最新作もそんな感じでしたね)。7inchのリリースは決まりましたが、現在録っているというアルバムのリリースも楽しみにしています。

*1:個人的には日曜昼は陸上のレースが入ることが多いので、正直普通に夜にやってくれたほうが都合がいいですが…まあ、とにかくライブを精力的にやってくれることを期待!

The xx @ 豊洲PIT

アルバム2作にして、「インディーポップの雄」から「世界のトップクラスバンド」へと一気に成り上がったThe xx。
3作目となる『I See You』のリリースを1月に控え、まず最初に東欧諸国5箇所でライブを行ってきた彼らが次に選んだ場所は…ここ日本、東京でした!

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フロントアクトのSamphaが、ピアノ弾き語りながらもビートを感じさせる音像でうまくThe xxの世界観への橋渡しを行ってくれた後、荘厳なSEとともに登場したロミー、オリヴァー、ジェイミーの3人。
1曲目から新作収録予定の新曲(「Lips」)を披露。次いで1stから、The xxの将来を決定付けた「Crystalized」と「VCR」をいきなり連発。「Crystalized」はロミーとオリヴァーが無音の中で異なるリリックを同時に歌ったのち、交錯して一つに戻る展開が最高に決まっていて格好良い。「VCR」は…もう言葉にならないくらい、綺麗。”大きな愛を語る 私たちはスーパースターみたい”というリリックがそのまま当てはまる。この時点で、早くも涙腺崩壊。

アルバムリリース前のツアーということで、ここからは新曲を織り交ぜながらの進行。「I Dare You」と「Brave for You」はポスト・ダブステップ感の強い、割とイケイケのトラック(ゆえに間に挟まれた「Islands」や、ジェイミーのソロ曲「Strangers in My Room」への繋がりもよかった)。
「Lips」や先行リリースされた「On Hold」も割とビート強めの曲だったので、新作はそういう方向で押し切るのか?…と思いきや、それが一転したのが「Performance」。この曲、事実上ロミーの弾き語り。2014年からやっている曲なので、『I See You』には様々なタイミングで作られたバリエーション豊かな曲たちが収められることに…なるのでしょうか?これはリリースされてみないと分からないかも。ただ”ビートが強い”、これだけは確か。

音響に関してはやや物足りなかった会場の豊洲PITでしたが、照明演出は綺麗。特に、「Infinity」でロミーとオリヴァーの掛け合いに呼応するように白いライトが交差していく場面は、2013年のフジロックにおける「Xライト」を彷彿とさせるワンシーンでした。

終盤は「Fiction」〜「Gosh」と「Shelter」のセルフマッシュアップ〜「Loud Places」〜一旦メンバー捌けてからの「On Hold」。ジェイミーのソロツアーを反映した、まるでDJのような展開。この流れを受けたお客さんたちの沸き立ち具合が異常(私もでしたが…笑)。「On Hold」が鳴り止んでからのオベーション、ものすごかったです。そこから感謝のMCを挟んで「Intro」〜「Angels」で一転して密やかに締めるのも、The xxらしくていい。

The xxの音楽には、交差(×)はするけどなかなかひとつ(-)になれなかったり、同じ方向に進むこと(=)が出来ない葛藤が常に含まれているけれど、それに対して潔く向き合うことで美しさや共振する感情を最大限スパークさせている…と思っています。
今回、バキバキのビートミュージックの展開も含んでより”強い音”になったThe xxは、アンダーグラウンドもオーヴァーグラウンドも、世代も文化も飛び越えて、より広い範囲にその美しさと感覚を伝えていきそう。今日のお客さんの顔ぶれが正にそうでしたし、新作リリース後のThe xxは更に面白くなっていくのではないかと。できればフジロックにもまた来てくださいね(ロミーから「またすぐ来る」の言質も取れたし、期待していいはず…)!

POLYSICS「トイス感謝祭」 @新宿ReNY

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POLYSICSのライブは相当久々。ワンマンは『Oh!No!It's Heavy Polysick』のツアー以来でしょうか?スケジュールが合ったのと、チケット代が安かった(トイス価格で1,013円!ポケベル!)ので、行くことに。
新宿ReNYは初めて行くハコ。V系バンドやアイドルがよくライブをやっているイメージ。ステージが見やすく、半円形の客席をぐるっと囲むLEDモニターが印象的でした。Devo「Mongoloid」のDOPEなMixが流れる中、開始を待ちます。

1曲目は企画名に合わせて「Toisu!」。そこから「Toisu!」が収録されている『Now is the Time!』から「Tei!Tei!Tei!」「シーラカンスイズアンドロイド」と連打。Now is~はポリにとってのステップアップ作だし、自分もお気に入りのアルバムなので、この流れはアガりました。

序盤からとにかくバンバン曲を繰り出す。個人的に印象的だったのは、最新作からの「Funny Attitude」(アイドルポップっぽいコーラスが無性に弾けさせてくれる)と「Genki Rock A-B-C!」(これやったの、いつ振りだろう?超レア)。フロアのテンションも右肩上がり。床がかなり揺れるので、ちょっと不安になる(苦笑)。

ハヤシのMC。だいぶ変わったな~と思ったのは、ステージの中央前方まで出てきてお客さんとコミュニケーションを取りながら喋るようになっていたこと。元々のポリのMCといえば、伝説の"4人同時MC"に象徴されるように「別に伝えることなんかねえよ、それより曲だ、曲!」みたいなイメージ。だんだんとまともに喋るようにはなってきていましたが、ギターも持たずにステージ前方まで出てくるようになっていたとは思いませんでした。アイドル(ゆるめるモ!)の楽曲制作などを通じて、ファンサービスというものへの理解が出てきたから、でしょうか?でも噛み噛みなのは相変わらず(笑)。


(ハヤシ作曲・プログラミングのゆるめるモ!「hamidasumo!」)

ちなみに今日のMCで一番笑ったのは、ハヤシが20周年ライブを豊洲でやることを発表した後にフミさんが発した「盛り土して、お待ちしてます」。時事ネタ!(笑)

中盤には、事前に公募していた「トイス!」の音声データを使ってのサンプラーミックス大会。ベーストラックはクラフトワークで、付けられたタイトルは「Toisu Non Stop」。個人的にはめちゃくちゃウケましたが、周りのお客さんの間ではそれほどでもなかったかな?でもこういうお客さんの需要無視で面白そうなことを好き放題やる姿勢がPOLYSICSの魅力だし、大好きなところです。この流れから「サニーマスター」や「Time Out」などを断片的に使いながら、最終的にハヤシとヤノのカラオケ大会に持ち込む流れも最高。ナイスなニューウェーブ・ディスコでした。

後半戦はライブで盛り上がる曲を10曲近く乱打。ポリのアンセムともいえる「Let's ダバダバ」が全くクライマックスにならないというところが、これまでPOLYSICSが生み出してきた楽曲の質と量の大きさ、そして衰え知らずのライブへの熱量を物語ってました。「ロボットマイムマイム」や「DTMK未来」のような新しめの曲もこの流れに含まれていて、これからもライブアンセムをバンバン作っていってくれそうな期待が高まりました。

アンコールでは、個人的にライブで初めて聴く「You-You-You」が!この曲、シングルなのにほとんど演奏されないので貴重です。とはいえ、カヨさん卒業後は演奏されていない曲もまだまだたくさんあるので、そういった曲もこれから20周年に向けてガシガシやっていただきたいところ。そして、あの武道館の約束もそろそろ・・・?とにかく、これからのPOLYSICSのライブに更なる期待が持てる感謝祭でした。

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OGRE YOU ASSHOLE @WWW X

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日曜でしたが仕事があったため、着いたのは開演ギリギリ。フロア右側最後方付近で観ました。

いきなり観覧位置を書いたのは、このライブはスピーカーを前方だけでなく後方両サイドにも増設した4チャンネル出音で、なおかつ各チャンネルに音を振り分けるサウンドコントロールがされていたので、観る場所によって印象がかなり異なると思われるためです。以下はあくまで「右側後方で観た人の感想」と捉えていただければ…。

客電が落ちると、メンバー登場…ではなく、今回のサウンドシステムの説明アナウンスが流れます。ドラムパターンをスピーカーごとに流したり、サンプルトラックの中でギターの音だけを回転させたりしていて、通常のライブの音響とは全く異なることを把握。そしてこのアナウンス、淡々とした語り口が微妙に昭和っぽくて、なんだかレトロフューチャーな雰囲気…。

説明が終わり、「長らくお待たせいたしました。オウガ・ユー・アスホールのライブを存分にお楽しみください」のアナウンスで遂に演奏開始。一曲目は最新EPの楽曲「寝つけない」。アナウンスの雰囲気を継いでか、冒頭はB面収録のterribly humid mix(歌はなく、人体のふしぎについての語りのみ)で始まりましたが、すぐに出戸さんの歌がカットイン。すでに早くも音像がヤバい。左右後方からも低音ブリブリの演奏が襲いかかってくるので、360度から音の針が突き刺さってくるような感覚。これは酔える…!
序盤は新曲3連発でしたが、お客さんたちもこの音にしっかり反応して、身体を揺らしまくります。前方に詰めていたお客さんが踊るので、後方にいた我々はだんだんと圧迫を受けることに(苦笑)。

新曲群のあとは、「夜の船」「ワイパー」「タニシ」「ヘッドライト」と、ここ最近ライブでよく演奏されている楽曲をプレイ。このあたりは、音響もわりと普通。
そこから「すべて大丈夫」「黒い窓」とワンマンならではの楽曲を挟み、「ムダがないって素晴らしい」「フェンスのない家」「フラッグ」「見えないルール」ラストに「ROPE long ver.」。全ての楽曲が昨年リリースのライブアルバム『workshop』に準拠したアレンジでの演奏で、ズバリ圧巻だったのはこのパート。
あのアルバムはオウガのライブにおけるPAの役割を示した一枚でしたが、今回もそのPAマジックを遺憾なく発揮(担当はやはり石原・佐々木・中村各氏でしょうか?)。オウガの演奏に要所要所でのディレイや飛び道具的なノイズを四方から加えて、『workshop』を聴いたときのぶっ飛び感をライブハウスのスケールで再現。
当然、初めての試みなので「見えないルール」のアウトロでのノイズ音が馬鹿デカすぎてバンドのグルーヴの妨げになったり、「ROPE」では〈まとめていく 人も自分も…〉のところでボーカルの声をぐるぐる回したところ遠いスピーカーからの声があまりよく聞こえなかったりと、一部でしっくりこないところもありました(場所によっては全然問題なかったかもしれませんが)。しかしそれでも、このパートは本当に「圧巻」の一言。ぶっ飛びました(実際、イッちゃってて行動がなんかおかしくなってたお客さんもいました笑)。

一般的にも「圧巻のライブをするバンド」としての認識があるオウガですが、『homely』以降の実践によって、その”圧巻さ”もある程度固まってきたように思います。それを記録したのが『workshop』であり、今回その内容を4チャンネルという極め付きの環境で実演したということは、今後に向けて一旦これまでのライブ表現にケリをつけて、きたるべき新アルバムの世界へと移っていこう…そんな意識が今回のライブにあったのかも?などと考えてしまいます。
アンコールで披露された「はじまりの感じ」は、まさにそんな印象を持って聴いていました。これからのオウガ、また楽しみです。あとWWW X、開店間もないのにいきなりチャレンジャーな企画をやってくれてありがとうございました!

D.A.N. ”Timeless” vol.1 @WWW X

時間を忘れるくらい、永遠に続くように音楽に没頭すること。けっこうやっているようで、実はあまりできていないことかもしれません。やらなきゃいけないことが細々とあり、後回しにしていた連絡に追われ、全部クリアしたー!と思ったらまたLINEの通知が…。そんなせわしない現代社会において、音楽は結局”ながら聴き”に留まってしまう。そんな人、多いのではないでしょうか?

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今夜行われたD.A.N.の自主企画”Timeless vol.1”は、そのタイトル通り「時間」という概念が無くなってしまうかような、素晴らしい音楽体験となりました。

ゲストのSeiho × Kan Sano × 松下マサナオのバンドセットは、アバンギャルドでカッコいいのに、MCや牛乳一気飲みなどで笑えて身近な感じまでしちゃうのがズルい。
ちなみに今日のSeihoさんの登場時のファッションはポニテ+サンバイザーに白のヘソ出しオフショルダー。遠目だと、もはやアリアナ・グランデでした笑。

そしてD.A.N.。「Curtain」でジワジワ始まり、そこからノンストップで「Zidane」「Ghana」「Native Dancer」「Dive」を連発。気分はクラブのピークタイム。そこから終盤、「Navy」「Time Machine」で夜の底にズブズブ沈んでいく感じも、アンコールでの「Now It's Dark」のリアレンジ版もよかったです。

D.A.N.もSeihoバンドも、ただ単に「夢中で踊る」だけでなく、探究心や想像力をかきたてる演奏でした。常にその先がどうなるのかを知ろうとする心、それが音楽に没頭し、時間を忘れる空間を生む…そんなふうに感じました。

QURULI featuring Flip Philipp and Ambassade Orchestra 「NOW AND 弦」

(※明日もあるのでなるべくネタバレ的表現は控えますが、ポロっと漏れてしまったらすみません。なにぶん、とんでもなく良いコンサートでしたので!)

当方、くるりで最も好きなアルバムは?と問われたら『ワルツを踊れ』と即答します。あの名盤のライブツアーで実演されたオーケストラとの共演が9年振りに実現するとあって、チケット代はそれなりにしましたが迷いなく行くことに。
2日前の京都音楽博覧会でもこの編成での演奏が予定されていましたが、落雷の危険により中止になってしまったため、どのような演奏になるのか全くわからないまま当日を迎えることに。『ワルツを踊れ』の再現?それとも他の曲もやるのか?オーケストラの人数は?タイトル「NOW AND 弦」の意味は?etc…。
ただ、わからないことが多い分、ワクワク度も高かったことは確か。ついでにオーチャードホールの雰囲気に合わせて、セミフォーマルで臨みました。自分なりの、このライブへの気合いです笑

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会場に着いてチケットを係員に渡すと、公演のプログラムが渡されます。表紙をめくると、なんと演奏予定曲目が全部書いてある!本当にクラシックのコンサートみたい!
このプログラムには演奏メンバーとスタッフ全員の名前も書かれてあり、資料としても有用。アンバサーデ・オーケストラのメンバーは4名参加、一人ずつ各パートにバラけてそこに日本人メンバーが数名ずつ加わる編成。バンドのほうは事前に公開されていたとおり、これまでのNOW AND THENシリーズとほぼ同じ。コーラスにUCARY & THE VALENTINEが入ったので、音源通りの「上海蟹」が聴ける期待が高まります。

19時をやや過ぎた頃に開始。SOLD OUTにもかかわらず、この時点ではやや空席が目立つ。強い雨で交通網に遅れが出ていたからでしょうか?ちょっともったいない(と思っていたら、続々とお客さんが入ってきて一安心。曲間に着席するよう、きちんと誘導していたスタッフさんたちはグッジョブでした。さすがオーチャードホール)。

オープニングはオーケストラのみでの演奏。そこからバンドが加わり、ストリングスを導入して最初にリリースした曲が始まる。岸田さんの声は好調、音のバランスもちょうどいい。早くも良いコンサートになることを確信。

そこから「オーケストラ編成でこれやるの!?」という曲が2連発。フレッシュな曲の勢いに、ストリングスが入る余地あるのかな…?と思いましたが、予想に反して演奏の絡みは良く、指揮者のFlip Philippもタクト振りつつ楽しそうにピョコピョコ飛び跳ねていて、逆により一層勢いと新鮮さが与えられていたような。なんだか新しい音楽の花が開いたような、そんな感覚になりました。
…とかなんとか思っていたら、岸田さんもMCで「楽隊の演奏のおかげで、歌う言葉に花がポッとついたような、そんな気がします」と言っていて、岸田さん自身も何か華々しさのようなものを感じているんだな、と恐れ多くもちょっぴり共感。

中盤はオーケストラコラボにおける大名曲で鳴り止まない拍手を呼び、そこから少し実験ゾーンへ。9年前にはなかったエレクトロとオーケストラの異種交配も実現し、あのツアーに行った人でも目新しく感じる部分も多かったのでは。

岸田さんは「くるりは過去と未来を行き来する音楽、ただそれだけをやっている」と今回言っていましたが、歌詞の内容だけでなく、表現手法においてもそのことを重視していることが如実に表れていたのが今回の「NOW & 弦」だったと思います。

先のエレクトロ×オーケストラは分かりやすい一例ですが、歴史と伝統あるやり方に敬意を払いつつ、新しい創造の糧として先へ先へ進んでいく、そんな音楽表現が盛り沢山に積まれた2時間。アンコールで岸田さんがスタンディングオベーションのお客さんを見渡して「もう座らんでええよ」と言い、立ったままオーケストラの演奏を堪能したフィナーレは、「これまで」も「これから」も「いま、ここ」で楽しめる、リスナー全員への祝福のようでした。

Blue Note Jazz Festival in Japan 2016

本場のBNJFを1日にギュッと濃縮した日本版。昨年に続き、2回目の開催です。

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高級クーペでおなじみのMINIがスポンサーとなった無料ステージでRM jazz legacy。いきなりハイクオリティな演奏を体験したあと、有料のエリアへ。

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まずはオールスタンディングであるDIZステージでGoGo Penguin。このバンド、今年のコーチェラ出演時から気になっていて、今回のフェスの個人的目玉でした。
グランドピアノ/コントラバス/ドラムといういかにもジャジーな編成ですが、実際はジャズというよりポストロックに近い。不規則なリズムを器用に乗りこなすピアノ、指引きとボウイングを巧みに使い分けるベース、手数の多いバカテクドラム。この3つの組み合わせから生まれる音像は、予想以上にハードでタフ。ポストロック大好きおじさんとしては、もうここから逃れられません。最高。
オールジャンルフェスであるコーチェラに呼ばれたことに象徴されるように、ジャズのような落ち着いた場だけでなく色んな場所に合うと感じました。ゲスの極み乙女。toeのような、邦楽ポストロックを聴く人にも好まれそうです。来年は是非フジロックorサマソニで。

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このあとはMarcus Miller→The Hot Sardines→MISIA×黒田卓也→George Benson→Andra Day→Yasei Collective(少しだけ)→Earth, Wind & Fire

メインステージであるBIRDステージ、前方は指定席に占められていてスタンディングはかなり遠い。そのためこのステージでやった3アーティストはあまり楽しめず。指定席の後方には空きがあったので、そこ潰してもらえればもう少し前に行けたのでは…。
ただ、音響についてはとても良かった。ここはやはり、歴史と伝統のBlue Noteとしては譲れないところだったのでしょう。遠くからでもMarcus Millerの超人的ベースプレイや、George Bensonの柔らかなギターと声はある程度堪能できました。

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注目度が高かったのはMISIA×黒田卓也。というか、MISIA。黒田バンドで2曲やったあとMISIA登場、「BELIEVE」を歌い始めて会場は大盛り上がり。でもバンドの演奏は、MISIAが入る前と入った後だと、後者のほうがグダグダのボロボロ。黒田さんも他のメンバーの譜面指差しながら指示出したり、「もっと上げて!もっと!」みたいなアクションをしたりと、バンマス業が忙しそうでした。たぶん、海外プレイヤー勢が知らない曲を練習する時間があまりなかったのでしょう。そう見えました。
スポーツ紙的な見出しをつけると「MISIA、ジャズフェスで本場LAのバンドと共演!」というような感じでとても目立つけれど、内実は上記のとおり。自分も切り取られた情報ではなく、きちんと中身を見ないとな、てな事を思いました。

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今回のBNJF、単に「ジャズ」という一ジャンルに限らず、色んな音が聴けたフェスティバルだったように思います。GoGo Penguinはポストロック、と書きましたがそれ以外のアクトも、例えばMarcus Millerはアフロビート、MISIAはJ-pop、Andra Dayはソウル+ブルース、EW&Fはディスコの要素がそれぞれありました。
「ロック」というジャンルがロックフェスティバルのブームと共に多様化していったのと同様に、「ジャズ」も今後様々なジャンルを内包していきながら発展していくのかもしれない。そんな予感がする、今回のBNJFでした。

BAYCAMP 2016

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今時珍しいオールナイトの邦楽ロックイベント、BAYCAMPに参加。ファンであるAwesome City ClubやYogee New Waves、観てみたい!と思っていたDragon AshやCreepy Nuts、人気はあるけどどうなの?と思うキュウソネコカミ夜の本気ダンスなど、いろんな立場で観れるアクトが1日でまとめて楽しめる。その上、締めは復活のTHE BEACHES!!これは行くしかない!!というわけで(1週間前の北海道マラソンの打ち上げも兼ねて)行ってきました。

観たルートは以下の通り。
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春ねむり

オーディション選抜。
1曲目でいきなり泣く。
友だちから「枕営業だよねー」とネット上でこっそり言われたらしい。
今どきの若者の生き方、考え方を象徴するリリックの中に「3.11」や「放射能」といった言葉をスッと含ませることができるあたり、慶應大生らしい頭の良さは感じられた。

NOT WONK

北海道苫小牧という地で、どこのシーンにも染まらずに、素直に良いと思ったものを受け入れ、考えながら直進するPUNK ROCK。
だから、パンクなのにベーシストがRadioheadのTシャツ着ている、というのもしっくりきた。

SHISHAMO

永遠の学園祭バンド。ボーカルの声の透明感はいい。
登場SEがSAKEROCKの「URAWA-City」でおおーっとなりました。

ヤバいTシャツ屋さん

今話題のヤバT。MCはやはり面白い。この日は割と不発のようだったけれど、Baの女の子の天然ボケは冴えてた

Vo.「バンドマンって、『いけるかー!』ってよく言うけど、どこ行くんやろな?」
Ba.「イオンモール!」

曲はまあ、フェイクみたいなもんでした。

Homecomings

今回のベストアクト。
数年前に観たときは「USインディのコピバンレベル…申し訳ないけどすぐいなくなるだろうなー」と思ったのですが、2016年現在もフジロック出演などそこそこ活躍しているホムカミ。新作の曲を試聴したときに「なんかタフになってる…?」とおぼろげに感じましたが、ライブではそのタフさがキワッキワに放たれてました。ベース、ドラムのリズム隊2人の肝を押さえた演奏とコーラスが地平を拓いて、その上で畳野さんの声と福富さんのギターが自由に空中浮遊するイメージ…そのイメージに乗って、開放感ある極上の感覚を味わわせていただきました。
新作はなんとなくパスしてましたが、買います。極上体験をまたしてみたいので、アナログで。あと、どうでもいいけど畳野さんがフロア見渡しているときに見せる笑顔が、『君に届け』の爽子がニタァ…と笑うときの表情に似ていて少しグッときました。
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こんな感じの笑い。

go!go!vanillas

もうすっかり邦ロックファン向けショウビズバンドですね。楽曲はとにかくノリがよく、メンバーの動きも可愛らしい。
昔、The VaccinesとVampire WeekendのTシャツ着て英/米/日が混合したインディーロック鳴らしていた時代が懐かしい。
できれば、このバンドもイエモンみたいに洋楽コンプレックスとのせめぎあいの中で日本人に響くロックを追求してもらいたい。どうかなあ。
登場SEがELOでおおーっとなりました。

シャムキャッツ

開始前、当たり前のように客席撮影OKを出す夏目さん。でもそんなにパシャパシャ撮るお客さんはいなかった。こんなところでもフジやサマソニとの文化の違いを実感。
「MODELS」と「AFTER HOURS」をやってくれたの嬉しかったなあ。てか「MODELS」がこの場であんなに歓迎される曲だとは思わなかった。
シャムキャッツの曲は、怠惰に流れる日常の中のふとしたきらめき(主に女の子の)を鮮やかに魅せてくれる。昼下がりの時間にもちょうどよかったです。

BIGMAMA

ちょっとだけ。
「長渕さんみたく『俺たちの力で太陽を引きずり出そうぜ!』とか言いたかったけど、晴れましたね」と言っていたが、迫るのは灰色の雨雲・・・!

ストレイテナー

初っ端から「Melodic Storm」。演奏に勢いはなくなってきているものの、円熟味は増していた。
中盤は直近のアルバムから。夕方、海沿いの「ユーグレナ」は沁みた。晴れてたらもっと良かっただろう。
そこから「Alternative Dancer」。まさかテナーで80sディスコ調ダンスができるとは思わなかった。素晴らしく気持ちいい。感動。でも周りはきょとんとしていた。まあ、そんなもんでしょう。

あとは書き足していく予定。とりあえず他に良かったのは、友人お気に入りのTHA BLUE HERB、ヒップホップの面白みをショーケースしたCreepy Nuts、再びいびつに転がりだした銀杏BOYZなどなど。
逆にこれはなあ…と思ったのはキュウソネコカミ夜の本気ダンス。踊れー!暴れろー!と言う割に音が薄すぎ。まあその薄さが若い子中心に受けてるんだろうな…とは感じましたが、音楽文化まで薄っぺらくしてしまいそうで不安です。

あとはやはり感慨深かったのはTHE BEACHESですね。やる側も観る側も完全に昔を懐かしむモードでしたが、これだけ「踊るロック」が多文化主義で攻撃的だった時代もあったんだよなー、と踊りながらぼんやり考えてました。夜明けまでは『HI HEEL』の曲を中心に怪しげに、日が出てからはどんちゃんパーティーに、という流れは最高でした。

BAYCAMP、毎年運営が良くないと言われてますが個人的にはさほど不都合は感じなかったし、雨が降ろうがトイレが少なかろうがバスの列がなかなか進まなかろうが、フジロックで慣れてるので「まあこういうのも、フェスの一部じゃね?」と、むしろ楽しんでました。
おそらく文句をつける方はロッキングオン社のフェスによく行く方だと思いますが、ああいうのはレジャー化の末にお客さん本位になりすぎてヤバさを感じる空間作りを放棄しているフェスだと思っているので、主催のATフィールドとチッタワークスにはこれからもドキドキとワクワクに溢れたイベント制作を続けていって欲しいと思います。

Fuji Rock Festival '16 day3(RHCP)

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今年のフジロックは、Red Hot Chili Peppersが出演する3日目のみ参加しました。
この日は午前中に10kmのタイムトライアルがあり(これがなかったら全日参加したかったです…BeckSigur Ros…)、反省会にも出てから、13:16東京発の新幹線で越後湯沢へ。会場着は15:30でした。
とりあえず、今回はRHCPを観ることが大目標だったので、まずはそちらの感想から。

Red Hot Chili Peppers @Green Stage

 新作『The Getaway』を携えてのフェスツアー真っ最中のRHCP。新曲群がどのようにプレイされるのか、そして前回来日(2011年サマーソニック)のときからバンドケミストリーがどのように変化しているのか、この辺りを気にしながら観ていました。
 ステージ後方には中央下部に半円状の大きなモニターがあり、それを取り囲むように小さな円形モニターが4つ。4人のメンバー、そしてその中心に据えられている「バンド」を表しているようなモニター配置で、開演前から少しグッときました。
 少し押すかと思いましたが、RHCPにしては珍しくほぼ定刻通りの開始。セットリストに関してはここまでのツアーの流れから「定番曲+日替わり曲」の組み合わせになると読んでいたので、最初も定番の「Can't Stop」で来るだろう…と、ほぼ会場の全員が考えてスタンバイしていたと思いますが、ジャムのあとに始まったのは何と新作からの「Goodbye Angels」。例のイントロで大盛り上がりからの大合唱を期待していたお客さん(私含む)は半ばズッコケ。というか、「ええっ!?」「それかよ!」という声が実際上がってました。しかしお客さんもすぐ対応して、予想外の流れにも「Ayo Ayo Ayo」の大合唱で応戦(?)。
 2曲目の「Dani California」以降はこれまでのツアー通り、「定番曲+日替わり曲」の流れに。そのツアー定番曲の中には新作からの曲も含まれますが、その口火を切った「Dark Nessecities」、これがとても良かった。フリーのスラップベースがぐいぐい引っ張りながらも、サポートメンバーによる鍵盤や、クラップ音を再現した乾いたドラムなどの新機軸・新要素がうまく絡み合っている。加えて、アンソニーの歌もとても丁寧。素晴らしい。
この日の本編では新作から、前述の2曲に加えて「The Getaway」「Go Robot」「Detroit」の計5曲がセットリストに入りましたが、どの曲も代表曲と並べて聴いても遜色ないレベルの魅力を放っていました。
 新曲群は、映像演出も良かったです。特に「Go Robot」は、近未来的なエレクトロ・ロック風の曲調に合うように連続ワイプやカラフルなモザイクなどを使って、楽曲の印象を更に強める働きをしていました。プロダクションチームも『The Getaway』というアルバムが新しいRHCPを示しているものだと理解して、ライブを共に作っているのだと感じました。
ただ、会場の盛り上がり自体はライブが進むにつれて徐々に右肩下がりに…。理由はギターの音が小さすぎるとか、単純に盛り上がる曲が少なかった(「Nobody Weird Like Me」か「Right On Time」が入っていたら少しは流れが変わっていたかも)とか色々ありますが、個人的にはバンドのケミストリーがまだ未完成だったからではないかな、と。
 前作『I'm With You』のツアーからサポートメンバーもガラリと変わりましたし、ギターのジョシュも自由に立ち振る舞えるようになった分、その曲における最適解のようなパフォーマンスから若干ズレてしまう場面も多かった。このあたりはより経験を積んで、整理されていけば、この日を上回る独特かつ強固なバンドケミストリーが生まれるはず。これまでも既存のものを壊して(壊れて)、その度にリビルドしながら独自の音を築き上げてきたRHCPなので、このへんは大丈夫なはず。あとは、それを見せる機会がまた日本であるといいですね。単独公演、期待しています。
 …あと、もう完全に蛇足になってしまいますが、アンコールの話。日本へのサービス?として、新作から「Dreams of a Samurai」をやってくれたのですが、アンソニーがもうグダグダ。いきなり入りそびれる、リズムとれない、果ては最後のヴァースほとんど歌えてない。そんな自分にキレたのか、機材を投げつけるという事態に(自分のいた位置ではよく見えなかったのですが、マイクを床に叩きつけたときの「ボゴッ」という音は聴こえました)。アンソニー…50歳過ぎても未だに大人にならないね…。
 まあそのあとの「Give It Away」はバッチリ決めてくれたので帳消し…かな?とにかくアンソニーもフリーも、ずっとカッコいいアダルトチャイルドでいてくださいね。

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以下、RHCP以外に観たもの。

Stereophonics @Green Stage(1曲だけ)
行きのシャトルバスの中で、長年フジに行っているフジロックお父さんと、過去の印象深いライブ(お父さんは2003年のBjork)やこの日のMyタイムテーブルについてアレコレ話しました。
私「ステレオフォニックス、最後の1曲だけでも聴きたいんです」
父「時間的に厳しいけど…頑張れよ!」
とエール(?)を頂き、苗場着いた瞬間に猛ダッシュ。コインロッカーが全て埋まっているという予想外の事態がありましたが、民宿?がやっていた荷物預かりに助けられてレース用具一式を手放し、グリーンへ。
着いたらちょうど最後の1曲、「Dakota」が始まるところでした。いきなりアンセムから始めるフジロック…これはこれで、贅沢な体験だったかも。

・Leon Bridges @Field of Heaven(10分くらい)
次のロバグラが観たかったのと、トイレが混んでいた(今年は人が多かったせいか、トイレも長蛇の列ばかりでした)ので、ほんの少しだけ。
'50sソウルや'60sドゥーワップを基調としたオールドテイストの楽曲ですが、身体のキレは若者らしい。ソウルっぽく腰をくねらせたりするんですが、そこまで年季入ってないというか、エロくないというか(笑)。フレッシュな感じ、ありました。

・Robert Glasper Experiment @White Stage
このあとのスロットに入っているBABYMETALのファンが大挙押し寄せていて、人数は多いけどジャズライブらしい盛り上がりはほとんどない、穏やかな一時間。
メタルアイドルに負けない、ぼくらのジャズアイドル・Robert Glasperは、今回もツボにハマるフレーズを連発。これまでDaft Punk「Get Lucky」などをジャジー+エクスペリメンタルにカバーしてきましたが、今回はRadiohead「Everything in Its Right Place」の一部を披露。ロバグラがあのイントロを弾くと、原曲の不穏な感じではなく、なんだか芳醇な馨りがするのが不思議でもあり、気持ちよかったです。
今回のエクスペリメントにはDJが加わり、よりヒップホップ感が強まってました。「拡張するエクスペリメント」、どこまで広がることが出来るか。また観てみたいです。

・Jack Garratt @Red Marquee
UKでブレイク候補に挙げられ、その期待に応えてデビューアルバムをチャートNo.1に送り込む一方、「The xxのジェネリック製品」とこき下ろされるなど評論家筋からはイマイチいい反応を得られていないJack Garratt。そのため割とおっかなびっくりな感覚で観に行ってみたのですが、いやはや、素晴らしいライブでした。
イントロダクションの直後にいきなり一番人気の「Breathe Life」が投下されたので「このあと、大丈夫?」と思いましたが、楽曲によって中心となる楽器を器用に切り替えて飽きさせず、トリップ・ホップ感のあるビートも身体を揺らし続けるのに充分な刺激がありました。特に良かったのは「Fire」における情熱的な歌。「Give me your fire!」とR&Bシンガーばりに歌い上げるその姿、こちらも情熱の炎に焼かれた気分になりました。
1人で全ての演奏をコントロールしているのでかなりせわしなく、今後のアイデアにも苦労しそうなスタイルではありますが、East India Youthのような先駆者もいますし、今後もいい曲をクリエイトしていってくれると期待しています。

Ben Harper & The Innocent Criminals @Green Stage + 苗場音楽突撃隊 @苗場食堂
このへんはRHCPに備えて食糧を補給したりしながらぶらぶら。
ベン・ハーパーはロックンロールと南半球の音楽がうまくミックスされていて、これまでのGreen Stageの流れを総括するような音。3日目、RHCPの前という位置がぴったりでした。
毎回ゲストがユニークな苗場音楽突撃隊、今回はラジオDJクリス・ペプラーさんがベースを携えて登場。しかし初日のRoute 17 R'n'R Orchestra出演後に風邪を引いてしまったらしく、美声もやや控えめでちょっと残念。それでも4時間の生放送やって苗場まで来るんだから、プロ根性あるなあと思いました。

・Explosions in the Sky @White Stage
RHCPをしっかり前で観るならベン・ハーパーの時点からグリーンに待機する必要があるのはわかっていたのですが、EITSも自分にとっては重要なバンド。4年前のフジロック、ノーマークだった彼らを夕暮れのホワイトで観て、圧倒的な轟音と美しすぎる夕暮れの景色に完全に打ちのめされてしまい、あのときの体験をもう一度味わいたい!とずっと願っていたのです。グリーンの混雑具合から「観れても15分が限度かな…それでもいい!観る!」と決心して、ホワイトへ突撃。
ステージに登場すると、まずは挨拶。「ニホンゴ、シャベレマセーン」とお決まりの逃げセリフで会場を穏やかな空気にしますが、音が鳴り始めた瞬間にその空気が、雰囲気が、景色が一変。もはや空間に身体が溶け出して、心だけがそこに残ったような感覚。研ぎすまられた情熱的な演奏が、そのむき出しの心にストレートに突き刺さっていく…もう、泣くしかないです。1曲目「Catastrophe and the Cure」で早くも涙腺破壊。「The Ecstatics」を挟んで、「The Birth and Death of the Day」で更にもうひと泣き。…そして残念ながら、ここで時間切れ。「The Ecstatics」で見せたエレクトロニカとの融合ももっと体験してみたかったので、今度はライブハウスでも観てみたいです。

・VIDEOTAPEMUSIC × cero @Red Marquee
小説や漫画には「実写化」がよくありますが、今回のコラボライブは、いわば”音楽の実写化”。怪獣が街を破壊する映像を観ながら聴く「Elephant Ghost」などは、曲を聴く以上に、更に想像が膨らみました。
いい実写化は、原作のストーリーをなぞるだけでなくて、さらなる色彩を与えたり、独自の解釈を加えたりする。そういうライブになっていたのと思います。
ただ、RHCPの直後ということもあり軽く放心状態で観たので、観ながらコークハイのコップ落としてしまったりするなど、ボケっとしている場面がいくつか…。周りで観ていた方々すいませんでした…。

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・深夜のあれこれ
Rookie A GO-GO。羊文学、South Penguin、MONO NO AWAREを観る。羊文学、ちょっと初期のきのこ帝国に似すぎか。South Penguinは元・森は生きているの岡田さんがプロデュースするのがよく分かる、ユルいバンド。MONO NO AWAREはキャラ立ちという面では多分最優秀賞。

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サーカス(ロス・イカリオス)。よくわからないけどとにかく凄い。こういう音楽以外の文化に、音楽に近い場所で触れられるのはいいですね。
クリスタル・パレスでJump With Joey。最終日深夜、オトナたちがヤケクソで盛り上がる。やたらデカいお兄さんとシンクロして盛り上がった後ハグするなど、皆さん情熱的。
GAN-BAN SQUAREで石野卓球。テクノ。アンダーワールドもかけてた。やたらキュートさを装った気持ち悪いアクションをしてた。気づいたら朝。
Red MarqueeでDJ Harvey。かなり古典的なプレイに感じたけど、フジのオーラスとしてはちょうどいい。金曜にアメリカで回してから日曜に日本の山奥に来るとか、本当お疲れ様でした。
フジの深夜は、日中のような圧倒的な体験はないけど、サーカスからDJまで幅広いカルチャーに触れられて、文化的にめいっぱい遊んでいる感覚がします。日本一素敵な遊び場。今年はタイムトライアルの直後で、身体は悲鳴を上げまくっていたのですが、それでも遊んじゃう。来年はたぶん3日間来れそうなので、もっとリラックスして愉しめそうです。

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今年もありがとう、フジロック

OCEAN PEOPLES '16 (ACC, NakamuraEmi)

GREENROOM FESTIVALの関連イベント、OCEAN PEOPLESへ。
このイベントは海を守り、海をより好きになってもらうためのフリーイベントで、音楽ライブももちろん無料で観覧可能。
今回は距離走を終えたあと、話題のフィメールヒップホップシンガー・NakamuraEmi、そしてシティポップを抜け出してより大きなポップの世界に飛び込んだAwesome City Clubの2組を観ました。


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15:50- NakamuraEmi

ギタリストとの2人編成。ラジオで「やまびこ」をよく耳にしていて、その曲の印象から最近ブームの”ギタ女”の系列で捉えられるかな…と思っていましたが、全然違いましたね(苦笑)。想像よりもヒップホップ色が強く、30代女子のリアリティーが詰まった”シンガー”でした。
編成や曲の雰囲気だけとらえると「MOROHAの女性版」とも言えなくもないですが、言葉のビートの強さ、社会人として長年勤務してきた経験も反映された(かもしれない)丁寧さ、そして表現の幅広さ、それらは彼女独特のもの。不穏な強い風の音を表現しながら丁寧に歌い上げた「台風18号」は、とりわけ白眉でした。


17:15- Awesome City Club (ac.)

アコースティック・セットでも、すごい盛り上がりでした。
5人全員が横一列に並び、最初は探り探りで進んでいく感じ。なにしろフルバンド編成のリリースツアーが2日前に終わったばかりですしね…。それゆえか、ギターのノイズトラブルなどもありましたが、フロントマンとしての成長著しいatagiさんがMCでうまくカバー。もう一人のフロントマン・PORINさんもギラギラに輝いていて、この2人の成長が素晴らしい光景を生み出す原動力になっている気がしました。