DO-MANNAKA de Alternative

走るポップ・リスナー、その魂のゆくゑ

Blue Note Jazz Festival in Japan 2016

本場のBNJFを1日にギュッと濃縮した日本版。昨年に続き、2回目の開催です。

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高級クーペでおなじみのMINIがスポンサーとなった無料ステージでRM jazz legacy。いきなりハイクオリティな演奏を体験したあと、有料のエリアへ。

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まずはオールスタンディングであるDIZステージでGoGo Penguin。このバンド、今年のコーチェラ出演時から気になっていて、今回のフェスの個人的目玉でした。
グランドピアノ/コントラバス/ドラムといういかにもジャジーな編成ですが、実際はジャズというよりポストロックに近い。不規則なリズムを器用に乗りこなすピアノ、指引きとボウイングを巧みに使い分けるベース、手数の多いバカテクドラム。この3つの組み合わせから生まれる音像は、予想以上にハードでタフ。ポストロック大好きおじさんとしては、もうここから逃れられません。最高。
オールジャンルフェスであるコーチェラに呼ばれたことに象徴されるように、ジャズのような落ち着いた場だけでなく色んな場所に合うと感じました。ゲスの極み乙女。toeのような、邦楽ポストロックを聴く人にも好まれそうです。来年は是非フジロックorサマソニで。

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このあとはMarcus Miller→The Hot Sardines→MISIA×黒田卓也→George Benson→Andra Day→Yasei Collective(少しだけ)→Earth, Wind & Fire

メインステージであるBIRDステージ、前方は指定席に占められていてスタンディングはかなり遠い。そのためこのステージでやった3アーティストはあまり楽しめず。指定席の後方には空きがあったので、そこ潰してもらえればもう少し前に行けたのでは…。
ただ、音響についてはとても良かった。ここはやはり、歴史と伝統のBlue Noteとしては譲れないところだったのでしょう。遠くからでもMarcus Millerの超人的ベースプレイや、George Bensonの柔らかなギターと声はある程度堪能できました。

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注目度が高かったのはMISIA×黒田卓也。というか、MISIA。黒田バンドで2曲やったあとMISIA登場、「BELIEVE」を歌い始めて会場は大盛り上がり。でもバンドの演奏は、MISIAが入る前と入った後だと、後者のほうがグダグダのボロボロ。黒田さんも他のメンバーの譜面指差しながら指示出したり、「もっと上げて!もっと!」みたいなアクションをしたりと、バンマス業が忙しそうでした。たぶん、海外プレイヤー勢が知らない曲を練習する時間があまりなかったのでしょう。そう見えました。
スポーツ紙的な見出しをつけると「MISIA、ジャズフェスで本場LAのバンドと共演!」というような感じでとても目立つけれど、内実は上記のとおり。自分も切り取られた情報ではなく、きちんと中身を見ないとな、てな事を思いました。

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今回のBNJF、単に「ジャズ」という一ジャンルに限らず、色んな音が聴けたフェスティバルだったように思います。GoGo Penguinはポストロック、と書きましたがそれ以外のアクトも、例えばMarcus Millerはアフロビート、MISIAはJ-pop、Andra Dayはソウル+ブルース、EW&Fはディスコの要素がそれぞれありました。
「ロック」というジャンルがロックフェスティバルのブームと共に多様化していったのと同様に、「ジャズ」も今後様々なジャンルを内包していきながら発展していくのかもしれない。そんな予感がする、今回のBNJFでした。

BAYCAMP 2016

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今時珍しいオールナイトの邦楽ロックイベント、BAYCAMPに参加。ファンであるAwesome City ClubやYogee New Waves、観てみたい!と思っていたDragon AshやCreepy Nuts、人気はあるけどどうなの?と思うキュウソネコカミ夜の本気ダンスなど、いろんな立場で観れるアクトが1日でまとめて楽しめる。その上、締めは復活のTHE BEACHES!!これは行くしかない!!というわけで(1週間前の北海道マラソンの打ち上げも兼ねて)行ってきました。

観たルートは以下の通り。
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春ねむり

オーディション選抜。
1曲目でいきなり泣く。
友だちから「枕営業だよねー」とネット上でこっそり言われたらしい。
今どきの若者の生き方、考え方を象徴するリリックの中に「3.11」や「放射能」といった言葉をスッと含ませることができるあたり、慶應大生らしい頭の良さは感じられた。

NOT WONK

北海道苫小牧という地で、どこのシーンにも染まらずに、素直に良いと思ったものを受け入れ、考えながら直進するPUNK ROCK。
だから、パンクなのにベーシストがRadioheadのTシャツ着ている、というのもしっくりきた。

SHISHAMO

永遠の学園祭バンド。ボーカルの声の透明感はいい。
登場SEがSAKEROCKの「URAWA-City」でおおーっとなりました。

ヤバいTシャツ屋さん

今話題のヤバT。MCはやはり面白い。この日は割と不発のようだったけれど、Baの女の子の天然ボケは冴えてた

Vo.「バンドマンって、『いけるかー!』ってよく言うけど、どこ行くんやろな?」
Ba.「イオンモール!」

曲はまあ、フェイクみたいなもんでした。

Homecomings

今回のベストアクト。
数年前に観たときは「USインディのコピバンレベル…申し訳ないけどすぐいなくなるだろうなー」と思ったのですが、2016年現在もフジロック出演などそこそこ活躍しているホムカミ。新作の曲を試聴したときに「なんかタフになってる…?」とおぼろげに感じましたが、ライブではそのタフさがキワッキワに放たれてました。ベース、ドラムのリズム隊2人の肝を押さえた演奏とコーラスが地平を拓いて、その上で畳野さんの声と福富さんのギターが自由に空中浮遊するイメージ…そのイメージに乗って、開放感ある極上の感覚を味わわせていただきました。
新作はなんとなくパスしてましたが、買います。極上体験をまたしてみたいので、アナログで。あと、どうでもいいけど畳野さんがフロア見渡しているときに見せる笑顔が、『君に届け』の爽子がニタァ…と笑うときの表情に似ていて少しグッときました。
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こんな感じの笑い。

go!go!vanillas

もうすっかり邦ロックファン向けショウビズバンドですね。楽曲はとにかくノリがよく、メンバーの動きも可愛らしい。
昔、The VaccinesとVampire WeekendのTシャツ着て英/米/日が混合したインディーロック鳴らしていた時代が懐かしい。
できれば、このバンドもイエモンみたいに洋楽コンプレックスとのせめぎあいの中で日本人に響くロックを追求してもらいたい。どうかなあ。
登場SEがELOでおおーっとなりました。

シャムキャッツ

開始前、当たり前のように客席撮影OKを出す夏目さん。でもそんなにパシャパシャ撮るお客さんはいなかった。こんなところでもフジやサマソニとの文化の違いを実感。
「MODELS」と「AFTER HOURS」をやってくれたの嬉しかったなあ。てか「MODELS」がこの場であんなに歓迎される曲だとは思わなかった。
シャムキャッツの曲は、怠惰に流れる日常の中のふとしたきらめき(主に女の子の)を鮮やかに魅せてくれる。昼下がりの時間にもちょうどよかったです。

BIGMAMA

ちょっとだけ。
「長渕さんみたく『俺たちの力で太陽を引きずり出そうぜ!』とか言いたかったけど、晴れましたね」と言っていたが、迫るのは灰色の雨雲・・・!

ストレイテナー

初っ端から「Melodic Storm」。演奏に勢いはなくなってきているものの、円熟味は増していた。
中盤は直近のアルバムから。夕方、海沿いの「ユーグレナ」は沁みた。晴れてたらもっと良かっただろう。
そこから「Alternative Dancer」。まさかテナーで80sディスコ調ダンスができるとは思わなかった。素晴らしく気持ちいい。感動。でも周りはきょとんとしていた。まあ、そんなもんでしょう。

あとは書き足していく予定。とりあえず他に良かったのは、友人お気に入りのTHA BLUE HERB、ヒップホップの面白みをショーケースしたCreepy Nuts、再びいびつに転がりだした銀杏BOYZなどなど。
逆にこれはなあ…と思ったのはキュウソネコカミ夜の本気ダンス。踊れー!暴れろー!と言う割に音が薄すぎ。まあその薄さが若い子中心に受けてるんだろうな…とは感じましたが、音楽文化まで薄っぺらくしてしまいそうで不安です。

あとはやはり感慨深かったのはTHE BEACHESですね。やる側も観る側も完全に昔を懐かしむモードでしたが、これだけ「踊るロック」が多文化主義で攻撃的だった時代もあったんだよなー、と踊りながらぼんやり考えてました。夜明けまでは『HI HEEL』の曲を中心に怪しげに、日が出てからはどんちゃんパーティーに、という流れは最高でした。

BAYCAMP、毎年運営が良くないと言われてますが個人的にはさほど不都合は感じなかったし、雨が降ろうがトイレが少なかろうがバスの列がなかなか進まなかろうが、フジロックで慣れてるので「まあこういうのも、フェスの一部じゃね?」と、むしろ楽しんでました。
おそらく文句をつける方はロッキングオン社のフェスによく行く方だと思いますが、ああいうのはレジャー化の末にお客さん本位になりすぎてヤバさを感じる空間作りを放棄しているフェスだと思っているので、主催のATフィールドとチッタワークスにはこれからもドキドキとワクワクに溢れたイベント制作を続けていって欲しいと思います。

Fuji Rock Festival '16 day3(RHCP)

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今年のフジロックは、Red Hot Chili Peppersが出演する3日目のみ参加しました。
この日は午前中に10kmのタイムトライアルがあり(これがなかったら全日参加したかったです…BeckSigur Ros…)、反省会にも出てから、13:16東京発の新幹線で越後湯沢へ。会場着は15:30でした。
とりあえず、今回はRHCPを観ることが大目標だったので、まずはそちらの感想から。

Red Hot Chili Peppers @Green Stage

 新作『The Getaway』を携えてのフェスツアー真っ最中のRHCP。新曲群がどのようにプレイされるのか、そして前回来日(2011年サマーソニック)のときからバンドケミストリーがどのように変化しているのか、この辺りを気にしながら観ていました。
 ステージ後方には中央下部に半円状の大きなモニターがあり、それを取り囲むように小さな円形モニターが4つ。4人のメンバー、そしてその中心に据えられている「バンド」を表しているようなモニター配置で、開演前から少しグッときました。
 少し押すかと思いましたが、RHCPにしては珍しくほぼ定刻通りの開始。セットリストに関してはここまでのツアーの流れから「定番曲+日替わり曲」の組み合わせになると読んでいたので、最初も定番の「Can't Stop」で来るだろう…と、ほぼ会場の全員が考えてスタンバイしていたと思いますが、ジャムのあとに始まったのは何と新作からの「Goodbye Angels」。例のイントロで大盛り上がりからの大合唱を期待していたお客さん(私含む)は半ばズッコケ。というか、「ええっ!?」「それかよ!」という声が実際上がってました。しかしお客さんもすぐ対応して、予想外の流れにも「Ayo Ayo Ayo」の大合唱で応戦(?)。
 2曲目の「Dani California」以降はこれまでのツアー通り、「定番曲+日替わり曲」の流れに。そのツアー定番曲の中には新作からの曲も含まれますが、その口火を切った「Dark Nessecities」、これがとても良かった。フリーのスラップベースがぐいぐい引っ張りながらも、サポートメンバーによる鍵盤や、クラップ音を再現した乾いたドラムなどの新機軸・新要素がうまく絡み合っている。加えて、アンソニーの歌もとても丁寧。素晴らしい。
この日の本編では新作から、前述の2曲に加えて「The Getaway」「Go Robot」「Detroit」の計5曲がセットリストに入りましたが、どの曲も代表曲と並べて聴いても遜色ないレベルの魅力を放っていました。
 新曲群は、映像演出も良かったです。特に「Go Robot」は、近未来的なエレクトロ・ロック風の曲調に合うように連続ワイプやカラフルなモザイクなどを使って、楽曲の印象を更に強める働きをしていました。プロダクションチームも『The Getaway』というアルバムが新しいRHCPを示しているものだと理解して、ライブを共に作っているのだと感じました。
ただ、会場の盛り上がり自体はライブが進むにつれて徐々に右肩下がりに…。理由はギターの音が小さすぎるとか、単純に盛り上がる曲が少なかった(「Nobody Weird Like Me」か「Right On Time」が入っていたら少しは流れが変わっていたかも)とか色々ありますが、個人的にはバンドのケミストリーがまだ未完成だったからではないかな、と。
 前作『I'm With You』のツアーからサポートメンバーもガラリと変わりましたし、ギターのジョシュも自由に立ち振る舞えるようになった分、その曲における最適解のようなパフォーマンスから若干ズレてしまう場面も多かった。このあたりはより経験を積んで、整理されていけば、この日を上回る独特かつ強固なバンドケミストリーが生まれるはず。これまでも既存のものを壊して(壊れて)、その度にリビルドしながら独自の音を築き上げてきたRHCPなので、このへんは大丈夫なはず。あとは、それを見せる機会がまた日本であるといいですね。単独公演、期待しています。
 …あと、もう完全に蛇足になってしまいますが、アンコールの話。日本へのサービス?として、新作から「Dreams of a Samurai」をやってくれたのですが、アンソニーがもうグダグダ。いきなり入りそびれる、リズムとれない、果ては最後のヴァースほとんど歌えてない。そんな自分にキレたのか、機材を投げつけるという事態に(自分のいた位置ではよく見えなかったのですが、マイクを床に叩きつけたときの「ボゴッ」という音は聴こえました)。アンソニー…50歳過ぎても未だに大人にならないね…。
 まあそのあとの「Give It Away」はバッチリ決めてくれたので帳消し…かな?とにかくアンソニーもフリーも、ずっとカッコいいアダルトチャイルドでいてくださいね。

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以下、RHCP以外に観たもの。

Stereophonics @Green Stage(1曲だけ)
行きのシャトルバスの中で、長年フジに行っているフジロックお父さんと、過去の印象深いライブ(お父さんは2003年のBjork)やこの日のMyタイムテーブルについてアレコレ話しました。
私「ステレオフォニックス、最後の1曲だけでも聴きたいんです」
父「時間的に厳しいけど…頑張れよ!」
とエール(?)を頂き、苗場着いた瞬間に猛ダッシュ。コインロッカーが全て埋まっているという予想外の事態がありましたが、民宿?がやっていた荷物預かりに助けられてレース用具一式を手放し、グリーンへ。
着いたらちょうど最後の1曲、「Dakota」が始まるところでした。いきなりアンセムから始めるフジロック…これはこれで、贅沢な体験だったかも。

・Leon Bridges @Field of Heaven(10分くらい)
次のロバグラが観たかったのと、トイレが混んでいた(今年は人が多かったせいか、トイレも長蛇の列ばかりでした)ので、ほんの少しだけ。
'50sソウルや'60sドゥーワップを基調としたオールドテイストの楽曲ですが、身体のキレは若者らしい。ソウルっぽく腰をくねらせたりするんですが、そこまで年季入ってないというか、エロくないというか(笑)。フレッシュな感じ、ありました。

・Robert Glasper Experiment @White Stage
このあとのスロットに入っているBABYMETALのファンが大挙押し寄せていて、人数は多いけどジャズライブらしい盛り上がりはほとんどない、穏やかな一時間。
メタルアイドルに負けない、ぼくらのジャズアイドル・Robert Glasperは、今回もツボにハマるフレーズを連発。これまでDaft Punk「Get Lucky」などをジャジー+エクスペリメンタルにカバーしてきましたが、今回はRadiohead「Everything in Its Right Place」の一部を披露。ロバグラがあのイントロを弾くと、原曲の不穏な感じではなく、なんだか芳醇な馨りがするのが不思議でもあり、気持ちよかったです。
今回のエクスペリメントにはDJが加わり、よりヒップホップ感が強まってました。「拡張するエクスペリメント」、どこまで広がることが出来るか。また観てみたいです。

・Jack Garratt @Red Marquee
UKでブレイク候補に挙げられ、その期待に応えてデビューアルバムをチャートNo.1に送り込む一方、「The xxのジェネリック製品」とこき下ろされるなど評論家筋からはイマイチいい反応を得られていないJack Garratt。そのため割とおっかなびっくりな感覚で観に行ってみたのですが、いやはや、素晴らしいライブでした。
イントロダクションの直後にいきなり一番人気の「Breathe Life」が投下されたので「このあと、大丈夫?」と思いましたが、楽曲によって中心となる楽器を器用に切り替えて飽きさせず、トリップ・ホップ感のあるビートも身体を揺らし続けるのに充分な刺激がありました。特に良かったのは「Fire」における情熱的な歌。「Give me your fire!」とR&Bシンガーばりに歌い上げるその姿、こちらも情熱の炎に焼かれた気分になりました。
1人で全ての演奏をコントロールしているのでかなりせわしなく、今後のアイデアにも苦労しそうなスタイルではありますが、East India Youthのような先駆者もいますし、今後もいい曲をクリエイトしていってくれると期待しています。

Ben Harper & The Innocent Criminals @Green Stage + 苗場音楽突撃隊 @苗場食堂
このへんはRHCPに備えて食糧を補給したりしながらぶらぶら。
ベン・ハーパーはロックンロールと南半球の音楽がうまくミックスされていて、これまでのGreen Stageの流れを総括するような音。3日目、RHCPの前という位置がぴったりでした。
毎回ゲストがユニークな苗場音楽突撃隊、今回はラジオDJクリス・ペプラーさんがベースを携えて登場。しかし初日のRoute 17 R'n'R Orchestra出演後に風邪を引いてしまったらしく、美声もやや控えめでちょっと残念。それでも4時間の生放送やって苗場まで来るんだから、プロ根性あるなあと思いました。

・Explosions in the Sky @White Stage
RHCPをしっかり前で観るならベン・ハーパーの時点からグリーンに待機する必要があるのはわかっていたのですが、EITSも自分にとっては重要なバンド。4年前のフジロック、ノーマークだった彼らを夕暮れのホワイトで観て、圧倒的な轟音と美しすぎる夕暮れの景色に完全に打ちのめされてしまい、あのときの体験をもう一度味わいたい!とずっと願っていたのです。グリーンの混雑具合から「観れても15分が限度かな…それでもいい!観る!」と決心して、ホワイトへ突撃。
ステージに登場すると、まずは挨拶。「ニホンゴ、シャベレマセーン」とお決まりの逃げセリフで会場を穏やかな空気にしますが、音が鳴り始めた瞬間にその空気が、雰囲気が、景色が一変。もはや空間に身体が溶け出して、心だけがそこに残ったような感覚。研ぎすまられた情熱的な演奏が、そのむき出しの心にストレートに突き刺さっていく…もう、泣くしかないです。1曲目「Catastrophe and the Cure」で早くも涙腺破壊。「The Ecstatics」を挟んで、「The Birth and Death of the Day」で更にもうひと泣き。…そして残念ながら、ここで時間切れ。「The Ecstatics」で見せたエレクトロニカとの融合ももっと体験してみたかったので、今度はライブハウスでも観てみたいです。

・VIDEOTAPEMUSIC × cero @Red Marquee
小説や漫画には「実写化」がよくありますが、今回のコラボライブは、いわば”音楽の実写化”。怪獣が街を破壊する映像を観ながら聴く「Elephant Ghost」などは、曲を聴く以上に、更に想像が膨らみました。
いい実写化は、原作のストーリーをなぞるだけでなくて、さらなる色彩を与えたり、独自の解釈を加えたりする。そういうライブになっていたのと思います。
ただ、RHCPの直後ということもあり軽く放心状態で観たので、観ながらコークハイのコップ落としてしまったりするなど、ボケっとしている場面がいくつか…。周りで観ていた方々すいませんでした…。

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・深夜のあれこれ
Rookie A GO-GO。羊文学、South Penguin、MONO NO AWAREを観る。羊文学、ちょっと初期のきのこ帝国に似すぎか。South Penguinは元・森は生きているの岡田さんがプロデュースするのがよく分かる、ユルいバンド。MONO NO AWAREはキャラ立ちという面では多分最優秀賞。

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サーカス(ロス・イカリオス)。よくわからないけどとにかく凄い。こういう音楽以外の文化に、音楽に近い場所で触れられるのはいいですね。
クリスタル・パレスでJump With Joey。最終日深夜、オトナたちがヤケクソで盛り上がる。やたらデカいお兄さんとシンクロして盛り上がった後ハグするなど、皆さん情熱的。
GAN-BAN SQUAREで石野卓球。テクノ。アンダーワールドもかけてた。やたらキュートさを装った気持ち悪いアクションをしてた。気づいたら朝。
Red MarqueeでDJ Harvey。かなり古典的なプレイに感じたけど、フジのオーラスとしてはちょうどいい。金曜にアメリカで回してから日曜に日本の山奥に来るとか、本当お疲れ様でした。
フジの深夜は、日中のような圧倒的な体験はないけど、サーカスからDJまで幅広いカルチャーに触れられて、文化的にめいっぱい遊んでいる感覚がします。日本一素敵な遊び場。今年はタイムトライアルの直後で、身体は悲鳴を上げまくっていたのですが、それでも遊んじゃう。来年はたぶん3日間来れそうなので、もっとリラックスして愉しめそうです。

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今年もありがとう、フジロック

OCEAN PEOPLES '16 (ACC, NakamuraEmi)

GREENROOM FESTIVALの関連イベント、OCEAN PEOPLESへ。
このイベントは海を守り、海をより好きになってもらうためのフリーイベントで、音楽ライブももちろん無料で観覧可能。
今回は距離走を終えたあと、話題のフィメールヒップホップシンガー・NakamuraEmi、そしてシティポップを抜け出してより大きなポップの世界に飛び込んだAwesome City Clubの2組を観ました。


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15:50- NakamuraEmi

ギタリストとの2人編成。ラジオで「やまびこ」をよく耳にしていて、その曲の印象から最近ブームの”ギタ女”の系列で捉えられるかな…と思っていましたが、全然違いましたね(苦笑)。想像よりもヒップホップ色が強く、30代女子のリアリティーが詰まった”シンガー”でした。
編成や曲の雰囲気だけとらえると「MOROHAの女性版」とも言えなくもないですが、言葉のビートの強さ、社会人として長年勤務してきた経験も反映された(かもしれない)丁寧さ、そして表現の幅広さ、それらは彼女独特のもの。不穏な強い風の音を表現しながら丁寧に歌い上げた「台風18号」は、とりわけ白眉でした。


17:15- Awesome City Club (ac.)

アコースティック・セットでも、すごい盛り上がりでした。
5人全員が横一列に並び、最初は探り探りで進んでいく感じ。なにしろフルバンド編成のリリースツアーが2日前に終わったばかりですしね…。それゆえか、ギターのノイズトラブルなどもありましたが、フロントマンとしての成長著しいatagiさんがMCでうまくカバー。もう一人のフロントマン・PORINさんもギラギラに輝いていて、この2人の成長が素晴らしい光景を生み出す原動力になっている気がしました。

Awesome City Club『Awesome City Tracks 3』リリース記念インストアライヴ @tower新宿

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リリース記念のインストアイベント。フロア満杯のため、急遽ustでも放映されるなど、大盛況でした。

ライブはアコースティックでしたが、atagiさんが楽しさのあまりフロアに降りてくるなど、アコースティックとは思えないくらいの盛り上がり。今のACCの開けている姿勢が垣間見られたインストアでした。

Snarky Puppy @赤坂Blitz

ジャズバンドの単独公演は初めてだったのですが、とてつもなく楽しめました。

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お客さんの、いい音への反応の早さも良かったです。バンドだけじゃなく、お客さんにも培ってきたものがあるのが感じられました。
こういう蓄積の上で楽しめたら、もっともっと最高の気分になれるだろうなあ。その領域に辿り着きたい。

yule @新宿NINE SPICES

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 uremaとSeebirdsという2バンドのスプリット盤リリースイベントに、yuleが出る!yule、ずっと観たかったんだよ!というわけで、飛びつくようにチケット予約して観に行ってきました。

 yuleはSpincoaster経由で知ったバンド。結成は2015年、初ライブは今日と同じNINE SPICESで2015年8月に行っています(そのときのSpincoasterキュレーター・deidakuさんによるライブレポートはこちら)。そのときから、まだ1年経ってない!ド新人!
 とにかくレーベル決定記念でフリーDLされていた「Sleepless sleep」が最高で、トクマルシューゴやOf Monsters & Menが好きな自分にとってはドンピシャな音。絶対大きなバンドになる!と思っていたのですが、今日のライブでその自信は確信に変わりました(松坂大輔風に)。


・演奏にスケールと高揚感がある
 これは「Sleepless sleep」を聴いたときも思ったことですが、メンバー6人の音が揃った時のスケールと高揚感が半端ない。NINE SPICESのクリームホワイト色の壁をぶち抜くほどの強度があるように感じました。「これは、フジのグリーンステージで観たいな…。」とまで思いましたね。
 デモ音源のときはもっとチマッとした感じの音だったので、ここ最近になって意図的に曲のスケールを大きくしているのでしょう。それだけ、大きなステージを夢見ていることの証だと思います。


・男女ツインボーカルが華やか
 昨今のバンドでは増えつつあるスタイルですが、男女2人のコーラスワークも良かったです。妖精のような魅力を放つAnnaさんと、ギターを弾きながら実直な音を生み出すReiさん、この2人のバランスは絶妙だと思います。
 近いのはAwesome City ClubにおけるPORINさん×atagiさんのツインボーカルですかね。これもタイプは異なりますが、華やかです。


Awesome City Club – Don’t Think, Feel (Music Video)


・意外と?ボトムの音がしっかりしている
 意外と、と書くと失礼かもしれませんが、ドラム+ベースがしっかりと多人数バンドの音を支える役目を果たしていました。これは音源では分からなかったことなので、今日確認できてよかったなーと思うところでもあります。
 「リズム隊がしっかりしているバンドは伸びる!」が最近の自説なので、yuleもその条件に当てはまってくれたらいいなあ。


・なにより、夢がある!
 なにかと「現実のアレコレ」に押しつぶされがちな昨今の日本のシーンにおいて、yuleはSEKAI NO OWARI並みに「夢見る音楽」を実現していると思います。今日はBeach Houseのプリマヴェーラ・サウンドでのライブ中継を観てきたのですが、それに負けず劣らずの「夢見る音楽」でした。


Beach House @ Primavera Sound 2016 (Barcelona)

 このまま成長していけば、日本のシーンではほとんど根付いていない「ドリーム・ポップ」というジャンルの先駆者になれるかもしれない・・・そんな期待も膨らんだ、今日のライブでした。
 とにかく、まずはアルバムを!早く出してほしい!!Reiさんは「年内に…」と言っていましたが、もう可及的速やかにリリースを!おねがいしまああああああす!!!

soundcloud.com

cero "outdoors"

「批評的に楽しむ」ということの大切さを思い知った
ceroは100年生きる音楽になる

序盤は1st・2ndを中心とした、跳ねるビート中心の楽しいライブ
初期の楽曲「good life」、それに続いた「スマイル」はどちらもレア。生活に近い音像なので、カクバリズムの標語である「衣・食・住・音」を思い出した

「Summer Soul」からは3rdからの曲中心、そこに1stの曲を混ぜる感じ
「Yellow Magus (Obscure)」で夜を連れてきてからは、完全にグルーヴィー・ナイトの幕開け

「ターミナル」では"ぼくがテントに火を付けた"という歌詞があるのですが、この曲やった途端に雨が降り出すという事態が笑
暗くなってからやってほしいなあ、と期待していた「Elephant Ghost」は、Wayang ParadiseでやったVIDEOTAPEMUSICとのコラボを再現。都市に狂乱をもたらしてた
今回のツアータイトルである「Outdoors」は、橋本さんのスラップ奏法が効いていた

恒例化したい、と言っていた野音ライブ
似合うし、野音でよくやっているバンドは文化的評価も高い
そうなったらいいな

TOKYO M.A.P.S (day2)

J-WAVE×六本木ヒルズによるフリーフェス、2日目です。
今日は風もなく快晴。絶好の日和になりました。

今日も亀田誠治さんのキュレーションのもと、GLIM SPANKY、片平里菜、蓮沼執太×U-zhaan赤い公園、ペトロールズ、SOIL & "PIMP" SESSIONSの6組が出演。昨日もそうでしたが、亀田さんがプロデュースを担当したアーティストだけで揃えたわけではなく、あくまでも亀田さん自身の好奇心で集めたラインナップの模様。

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各アーティストのライブレポと写真は公式サイトに載ってるので、そちらを。
個人的に良かったと思うのはGLIM SPANKYと蓮沼執太×U-zhaan。ペトロールズとSOIL & "PIMP" SESSIONSも良かったですが、これはもう良くなることが予想されてたというか、「想像通りの楽しさ」だったので、あえて除外。
残り2組、片平里菜は「分かるけど、こういう淀みを掬うような歌を必要とする人は限られるよなあ」という感じ。赤い公園に関しては直近のアルバム曲を中心に攻めてましたが、以前はあった「ポップさをより引き立たせるポストロック感」がなくなってしまっていて、たぶんもうこの先聴くことはないだろうな・・・と正直、思ってしまいました。
まあ音楽の好みが100パーセント合う人なんていないので、1人の人間が選んだラインナップの中に自分とは合わないアーティストがいるのは当然。むしろ合う/合わないを自分自身の中で選定していくのも、酷だけど愉しかったです。

良かったアクトについて。
GLIM SPANKYは潔く5曲、ノンストップで演奏。佇まいも曲も、むちゃくちゃ格好良い。
最後は亀田プロデューサーをベーシストとして招いての「大人になったら」。亀田さんはGLIM SPANKYが売れる前、というかまだお客さんが一桁の頃からライブを観に来ていて、ずっと注目していたそうです。亀田さんのプロデューサーとしての眼力すごいな、と思うのと同時に、長野の田舎から出てきて、なかなか理解されることのなかった2人の夢や目標に共振してくれる存在としての絆も感じました。今日の「大人になったら」は、そんな"物語"の後押しもあって、更に力強く響いた気がします。

ああ こんなロックは知らない 要らない 聴かない君が
上手に世間を渡っていくけど
聴こえているかい この世の全ては
大人になったら 解るのかい

(「大人になったら」)


蓮沼執太×U-zhaan。とにかく演奏時と、喋ってる時の落差がひどい(笑)。
音は蓮沼さんのボーカル・キーボードとU-zhaanさんのタブラが絶妙に絡んで、もう会場の空気が原子レベルでうきうきするかのような、要素は少ないのに圧倒的な多幸感がありました。
が、曲間になるとU-zhaanの自虐+傍若無人ワールドが大展開。いきなり「タブラ、屋外合わないんだよね。亀田さん、なんで呼んだのかなあ?」と初っ端からライブの意義を全否定。チューニング時には「蓮沼くん、シの音ちょうだい(蓮沼さん、「Cの音」だと思って音を出す)違うよ、シ!なんだよその"音楽の教養あります"アピールは!」と相棒をけなし、遂にはゲストで呼んだ亀田誠治さんに対しても「今からループ作るんで、ちょっと黙っててください」・・・。
ただこれらの喋りも、トボけたキャラクターと超絶プレイのおかげでなんとなく許される。盛大に笑かせて頂きました。


TOKYO M.A.P.Sは今回で9回目。ただ、今日の締めだったソイルの社長、あと昨日のハマケン(在日ファンク)も言ってましたが、だんだんと都心の屋外でこういう音楽イベントを開催するのは難しくなってきているようです。
やはり気軽に「生の音楽」に触れることが出来る場はあったほうが良いので、様々な条件が厳しくなっていく中でもTOKYO M.A.P.Sを主催するJ-WAVE六本木ヒルズには頑張ってもらいたい。もちろん、イベントを継続していける良い環境を作るには、参加者自身の考えや意識も重要。私も出来る範囲で協力していきたいです。


あとは来年のプログラム・オーガナイザーが誰になるか。10周年ということで、オーガナイザーを置くとしたら相当ビッグな人物になるでしょうね。
個人的には山下達郎さんが良いのですが、達郎さんはJ-WAVEじゃなくTOKYO FM側の人だから無理か。J-WAVE関連だったら、クリス・ペプラーさんやジョン・カビラさんのようなナビゲーターにイベント・オーガナイズをしてもらうのも面白いかもしれませんね。色々想像は膨らみますが、こればっかりは開催発表の時期にならないと分からない。とにかく、今から楽しみです。